74 / 75
◎オレは恋人と先へ進みたい(9)
絡みついてくる内部に意識を持っていかれそうになりながら、健の表情を伺う。賢太郎の顔を熱っぽく見つめて息を上げながらも、あまり感じている様子がない。初めて人を受け入れたのだから、そこまで求めるのは酷だということは分かっている。けれど、自分の昂ぶりとの温度差をどうしても感じてしまう。
「ごめんな、健。気持ち良くないんだろ」
「……正直な話、そうかも。でも、それで良かったと思ってるよ」
「なんで」
「賢太郎の顔、きちんと見れるから。俺の中で気持ちよくなってくれてる顔とか、我慢して必死で耐えてる顔とか。全部、色気があってカッコいいよ」
健の言葉が、心の中で水面の波紋のように広がっていく。照れ臭そうな顔が、気遣わしげな目線が愛おしい。下腹部の快感と愛情が混ざって、多幸感を形成した。
脈打ちながら大きくなっていた自身の一部が、健の中で精を吐き出した。健もそれを感じ取ったのか、満足した表情で笑いかけてくる。受け止めきれないほど大きな幸福を分け与えるように、健を力強く抱きしめた。
「健、好きだ」
「うん」
「次やるときは、お前のことも気持ちよ くするからな」
「楽しみにしてる。大好きだよ、賢太郎」
健の両手が賢太郎の頭を撫で回す。安心と疲労に襲われ、二人揃って意識を手放した。
ともだちにシェアしよう!