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 雨は未だ止まず。額に張り付く前髪をかき上げ、さて、と息を吐く。 「我が國に何用かッ!!」  徒人であれば委縮してしまう、覇気の籠った声が響く。 「帝王より、御触れである! 我らが白の帝国の配下へと下りたまえ! 美しき者へは寵を、強き者へは武勲を授けよう! 抵抗する者には死、あるのみ!」  なんと、なんと自分勝手で傲慢な御触れか。  あの使いの白い兵をこの刃で貫けたらどんなにいいだろう。ぎり、と柄を握りしめた手のひらの上から強く手を握りしめられる。ハッと振り向いた。 「怒りに我を忘れてはいけません」  劉師、と。  はくりと息が零れた。淡い栗色の髪をうなじでひとつに結んだ、柔和な笑顔の男性は直刀を手に、宣言をする。 「我らが黑花の帝よりお言葉を賜った! しかと耳にするがいい、蛮族どもよ! ――我らは賊になど屈しない! 正面から戦わせてもらおう!」  ワァー――と背後が沸いた。  ぎょっとして振り向けば、騎士たちが雨の中武器を手に立ち並んでいるではないか。ぽかんと、間抜け面を晒していると、強すぎる力で腕を引かれる。 「莫迦者。門が閉じるぞ」 「……ぁ、はいっ!」  ギギギ、と鈍い音を軋ませながら、ゆっくりと城門が閉じていく。  ちらりと、視線を向けた外側には白い軍勢が広がっていた。

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