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第4話 町に行く理由

一年に一回、春に町の教会出向く用事が私にはある。 散り散りの小さな教会は、この時期に自分が担当している地区の出生死亡届を町の教会本部に報告しなければならないのだ。 それが受理されるまで町にいなければいけないことになっている。 セドリックに会えなかった五年間だったが、私はその気になれば会うことはできたのだ。 しかし私は訪ねることはしなかった。 学校に通うものならば分かるだろう、保護者が訪ねてくるのは恥ずかしいものだ。 だから私はあえてセドに会わなかった。 そして彼はピアノを引くことは出来なくなってしまった。 けれど今回は村に彼の居場所があることを伝えなければならないと思ったのだ。 彼が村に帰ってきたら、きっと娘を亡くした村長一家の生き甲斐になる。 三月、私は村の教会から町に向かう列車に乗った。 町の教会に用事を済ませることが目的だったが、町にいるセドリックに会うことが目的と化していた。

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