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第8話 家に帰りたくないセドリック
セドが村に帰ってから今日で一週間になったけれど、彼が村で職を探すことはなかった。
相変わらず、教会の私の部屋に入り浸って昼寝をするだけだ。
村長の仕事も手伝うこともせず、こうしてダラダラと過ごして良いわけでもないので、私の薬草畑の雑草抜きに誘った。
「手伝ったら、ご褒美を俺にください」
「私の作った昼食を食べているのがご褒美じゃないだろうか」
「……そうだね」
今日の彼は朝から変だった。
呆けていることが多く、そして口数も少なかった。
「アルは正装で畑仕事して、汚れないの?」
「君がいるから、私はこの服を着ていないと駄目だろう」
私は畑仕事をするときも、正装を崩さなかった。
理由は、彼に隙を見せないためだ。
セドには『聖職者ではない私』を見せられなかった。
「今日アルの部屋に泊まってく」
「帰りなさい」
「今日は一人でいたくない。これから何でも仕事をする」
「今日どころか違う日でも、君を泊めることは出来ない。帰りなさい」
「やだ」
拒む理由は君が私に何をするか分からないからなのに、正装も君が居るからだと、はっきり言ったほうがいいのだろうか。
「私は君を受け入れることは出来ない」
セドが何も言わなくなったので、分かってくれたのかと振り返ってみると、セドは空を見上げていた。
何時もと違う彼は、何処か知らない人のようだった。
「怖いんだ」
セドの瞳には怯えているように見えて、その彼の怯えを取り除いてあげたくて私は聞いた。
「……何か悩みでもあるのかい、セドリック」
「今日、俺の話を聞いてほしい。だからどうかアルのそばにいさせてください」
セドが泣いているような、そんな気がした私は溜め息を吐いてから頷くことにした。
「君が明日の朝、教会の掃除をするのなら泊めてあげよう」
「ありがとう、アル」
するとセドは空を見上げたまま、感謝を述べた。
今日の彼は、何時もより元気が無いように私は感じていた。
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