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第9話 村に帰れなかった理由

夕食は私が作った。 セドリックに作ってもらおうと思っていたが、彼はピアノの下で居眠りをしていたので声を掛けなかった。 今日に限って、落ち着いた表情をしていなかったセドがようやく休んでいるような感じがしたから、私は放置していた。 そして夕食が出来上がったので、セドを起こそうとした。 けれど眠っているセドは安らかで、起こすのはしのびないと感じたので、私は彼に毛布を掛け隣に座って待つことにした。 「……本当はピアノなんてどうでも良かったんだ」 セドは目をつぶったまま、私に話しかけていた。 「神父様のピアノを弾いてるから、気を引きたかっただけで始めた。……ピアノを弾く神父様が綺麗だから、俺は神父様に恋をしてた」 苦しそうに彼は眉を寄せて話を続けた。 「俺はアルが好きで、でもアルには恋い焦がれる神がいた。気を引くためにピアノを勉強して、……12歳の今日事故が起きた」 「……ピアノの蓋が演奏中に落ちてきたのかい」 「そうだよ」 「痛かったろう」 「事故にしたかった」 したかった? 「……事故じゃないのかい?」 「俺を手に入れたいと男爵夫人が、練習中に蓋を落として事故にみせかけてきた。ピアノが弾けなくなれば、もうアルの気が引けなくなる」 セドは泣いていた。 彼の瞳が開き、その瞳から涙を流していた。 「……夫人を殺してしまおうと考えた。でも未遂に終わって、……弱味に漬け込まれて、俺は夫人の愛人になった」 「何故今になって打ち明けた?……そのときに相談してくれたら良かったのに」 「夫人の愛人になったから、村には帰れなかったんだ。愛人になってから夫人を抱いて、夫人の思うまま男も目の前で抱いた。……俺はどうしようもない、町の遊び人になってた」 セドの手が私に伸びて、頬に触れてきた。 「辛い思いをしていたんだね、セドリック」 「……町でやり残してきたことを、してくる。……夫人と縁を切ってくるから、そしたら俺は村で真面目になるよ」 「そうか」 「だから今、アルを抱かせてください」 は?! 「冗談は止めてほしい!!……私は神に生涯を捧げている」 私は飛び起きて、セドから離れようとした。 しかし、セドのほうが行動が先だった。 「アルの心が神に向いてるなら、身体だけでいい。今俺にください」 「身体も神に捧げている!!セド、君に捧げるつもりはない」 私より一回り以上大きい身体になっていた彼に、私は組み敷かれ、慣れた手付きで服を脱がされてしまった。 私の身体に、右肩にキスをされて声を失った。

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