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第18話 静寂

その日私が畑から帰ると妖精ちゃんは何も言わないでくれた。 乱闘して擦りむいた傷に薬を塗ってくれる妖精ちゃんを見て、私に何が合ったのかは知ってると理解した。 「もう少しアルフレッドは体力をつけたほうがいいと思うの」 風呂から出た時に妖精ちゃんはそう言った。 同性を愛することは禁忌でしかないのに、何故ミカエルは私にあんな行為をしたのか。 愛を育むことは異性としか許されていないはずなのに。 それを言うならセドリックもだった。 何故私を……。 「……」 ミカエルのこれからとのことを考えなくてはならないと心の中では理解しているのに、私はセドのことを思い出していた。 私は寝間着のままピアノの椅子に座った。 最近ピアノの椅子に座ると妖精ちゃんは私のそばに来るのに、夜中だからか現れなかった。 ただただ静寂が私の回りを包んでいく。 その静寂はピアノを弾けば納まるはずのに、私の手は鍵盤に置けなかった。 ピアノの鍵盤の蓋を開けることすら出来ずに、私は啜り泣いていた。 こんなに惨めな気分になるのはいつぶりだろう。 セドに犯された日ですら、こんな気分にはならなかったのに。 「こんな……、私は嫌だ」 その晩私はピアノの下で、泣きながら眠りについた。 そこはセドに犯された場所なのに、酷く落ち着けたのだ。

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