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第28話 妖精ちゃんの生き甲斐

「私は何のために生きているのだろう……」 薬の簡単な調合をしている最中、私の口からフッと出た言葉だ。 すぐに返事が返ってきてもいいだろうが、妖精ちゃんは私の言葉が聞こえてないのか、隣でその調合した薬を瓶に詰めてくれている。 『昼過ぎまではなんとしてでもこの作業を終わらせて読書の続きをするんだから!!』 彼女は今恋愛小説にハマっているらしく、昼を過ぎると夢中になって読書をしている。 恋愛のどこが楽しいのか私には分からないが、彼女にとってそれはとても楽しいことなのだろう。 「妖精ちゃんは今どんな本を読んているんだい?」 『同性愛の苦悩恋愛小説よ』 「ど……同性愛か。それはまた禁忌な本を読んでいるね」 神に使える我らがそんな本を読んでいては信仰に影響するのではないか、そう思いながらも止めることは出来なかった。 『たまたま好きになった相手が同性だった。それでもようやく身も心も捧げあった相手なのに、家族に引き裂かれようとしている。そんな中で二人は離れ離れになるかもしれない!!……ってことろまで読んだのよ。次が気になって仕方がないわ』 「妖精ちゃんがハマるくらいなんだから、さぞかし面白いんだろうね」 『そうね!!アタシの生き甲斐よ』 そんな恋愛小説が生き甲斐なのか……、妖精が世も末だ。 『アタシの生き甲斐はセドリック×アルフレッドとその小説よ』 「僕も生き甲斐なのかい?」 『当たり前じゃない!!ワンコ美少年×儚げ神父って美味しいよ。……理事長の息子美少年と取り合うワンコ美少年、でもアタシはセドリック×アルフレッドよ。ミカエル×アルフレッドは嫌!!』 なんだか知らないが、どうやら私の周りは妖精ちゃんの好きな恋愛小説のようになっているらしかった。

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