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第30話 跡に触れないで

またしてもセドリックの手が私の素肌を這う。 嫌だと思うのに、その手を払えないのは何故だろうか。 そう考えても私の中で答えは簡単に出そうも無かったら。 「っ……、跡に触らないで」 それでも右の火傷跡に触れられたくないのに、あっさりと唇で触れられた。 もうそこが痛むことはないし、敏感な部分でもないのだからさして気にすることはないと自分でも思っているのに、セドにはそこに触れてほしくはなかった。 「この傷を負ったとき、痛かったですか」 「……辞めてくれないか」 どうしても思い出したくない過去は誰だってあるだろう。 「痛かったですか?」 どうしても聞きたいらしかったセドは再度また聞きてきた。 「痛かったというよりも、……冷たくて熱かった」 炎が私の肩に触れたときはとてもいい冷たいと感じたが、炎が私を焼いていると冷静に気付いたときはとても熱かった。 「俺の左手に蓋が落ちてきたとき、同じようにとても冷たかったです。そして冷静に状況を見れたら熱くて痛くなってきました」 セドの手は私の腰に回ってきて、耳元に唇を寄せて囁いた。 「貴方も俺も12歳で同じ音楽学校で起きたことなんです。……偶然だと思いますか?」 腰に回る手が尻を揉み、そのまま穴に近づいてきた。 「っん……、ん」 「期待しちゃって腰が浮いてますね。とても可愛いです。でもちゃんと考えてください」 セドは何が言いたいのだろうか。

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