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第39話 翼をもいだ
次の日の早朝、薬草畑で手入れと収穫をしていたら声を掛けられた。
「せいがでますね」
その相手はダニエル教官だった。
私は内心驚きながら挨拶をした。
「ダニエルさん、おはようございます。散歩ですか」
「君に会いに行きたんだ、アルフレッド」
教官の面差しは優しい雰囲気で、あの頃と変わっていなかった。
「……お元気そうて何よりです」
「君もね」
私は作業に戻って雑草を抜きはじめた。
「まさかアルフレッドがここで神父をしているとは思わなかったよ」
「手紙も書かなくてすみませんでした。教官に甘えてしまうわけにはいかなかったので」
「……まだ僕を教官と呼んでくれるのか」
その甘い考えをしていた私はハッとした。
教官は故意に事故を起こした犯人かもしれないのだった。
「あの、セドリックのピアノ事故は何故起きたのでしょうか」
私は立ち上がり目線を合わせてそう聞くと、教官は
真面目に答えた。
「……あの事故は僕が起こしたものだよ。アルフレッドも薄々気付いているんだろうと思ってたけど」
まさかこんな簡単に真実を知ることになるとは思っていなかった私は、ショックを隠しきれず頭が破裂するくらいに怒りを感じた。
「それはなぜですか、……ダニエル教官?音楽家の貴方なぜが才能を潰すことをするのですか?貴方も同じ音楽家ですよね?!」
悪びれることもなく、ただ飄々と微笑するダニエル教官に詰め寄った。
「彼は音楽の才能に恵まれていたし美しい。だから僕のもとを巣立っていかないように翼をもいだだけだ、アルフレッド。君みたいなことがないようにね」
翼をもいだ?
巣立って行かないように?
一体どういうことだろうか。
僕は混乱した。
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