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第40話 ダニエル教官
「君が僕に殻を破るにはどうしたらいいかと懇願するのを待っていたのに。家に閉じこもってしまった、……僕はガッカリだ」
なぜ私がダニエル教官に懇願すると思い混んでいるのだろうか。
自らの殻を破れとを言われたのだ、己と対峙をし勝利なければ、その先には進めないのだと私は必死になってピアノに打ち込んでいた。
私の考えは間違っていないはずだ。
「君を家から出すために火を放ったのは間違いだったと僕はようやく気付いたよ」
ダニエル教官は私に近付いてきたので、私は後ずさった。
「……教官が私の家に火を放った?」
「まさか重体で面会謝絶になるほど大きい事件になるとは思わなくてね」
教官の手が僕の腕を捕らえるともう片方の手で右肩から背中にかけて触れてきた。
「痛かっただろう、アルフレッド」
「……触らないでください」
「どうしたのだ?」
「右肩に触れないでください」
私は右肩に触れる教官の手を勢いよく払った。
「貴方は教官として失格です!!」
教官として、人間として、間違った道を選んでしまったダニエル教官を私は叱った。
「君がそんなに怒るところを見るのははじめてだね、アルフレッド。……満足な演奏が出来ない自分を叱るときよりも怖い表情だ」
何がおかしいのか教官はクスクスと笑い始めた。
「この村から出ていきなさい。ダニエルさん、貴方は町に戻り罪を償わなければなりません」
「その権限があるのは村長だけだ。僕のことを話すとなると、君の右肩の火傷の跡とセドリックの事故のことも話さなければならない。君にそんな勇気があるのかな?」
だからなのか、セドリック。
私にダニエル教官に会わせたくないと言った理由がこれなのか?
火傷の跡を公に出来ないと思った心の優しいセドリックは、教官に強く出られなかった理由を今理解した。
セドリックは私を守りたいと思ってくれたのか。
ダニエル教官は私の腕をとった。
「そうだね、君が僕のもとに来るのであれば、セドリックのことは諦めよう」
私はセドリックに守られていた。
「そんなこと……、私は出来ない」
それなのに私はセドリックには尽くせない。
私の心は神のものなのだ。
教官は私の腕を引き寄せ抱きしめてから、畑を去っていった。
「では、またくるよ。アルフレッド」
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