41 / 42
第41話 同族嫌悪
その日一日は納得出来ないことだらけで、仕事は身に入らなかった。
「しんぷさま?……神父様、どうかしましたか」
教会にミカエルが訪ねて来ていたのにも私は気付いていなかった。
「いえ、……なんでもありません」
「心ここにあらずという感じですね」
こんな少年までに私の気持ちが読めるなんて思いもしてなかった。
私が思っているよりもミカエルは人の気分に鋭いのだろう。
「ミカエルにお聞きします。教員のダニエルさんはどう思いますか」
「僕ははあまり好きになれないです」
即答した彼は、そのまま祭壇に向かい祈りはじめた。
「神父様、僕は同性愛者です。女より神父様のような美しい人を愛でたいです。でもこれは神の教えに背く禁忌だと自覚してます」
祈りながら禁忌を口にするとは、なんと愚かなことだと私は内心嘆いていた。
けれどミカエルはそのぶん自身に正直な少年で、それは彼の長所で素晴らしいことだ。
「僕は同族が大嫌いです」
「同族とはなんですか?」
「美しい男をが好きな、男を襲う奴のことです」
なるほど、だから今のセドリックをミカエルは毛嫌いしているのですね、妙に納得してしまった。
「ミカエル先生も僕と同じ志向の持ち主だと思います。だからあまり好きになれません」
「……そうですか」
ミカエルは自分に正直過ぎる少年だ、私も彼に襲われた身ではあるものの、ダニエル教官よりは歪んではいない。
まだミカエルは私にでも救えれそうな迷える仔羊だが、教官は私には救えないのだろう。
「神父様、今日は一段と憂いを帯びていて美しいです。ここで貴方を犯したら、僕は地獄に堕ちるでしょうか」
そんな言葉を耳にした瞬間ミカエルの身体が私に覆い被さり、押し倒されてしまった。
ミカエルの前でも気を抜くとは、私こそ救いようのない愚か者でした。
「やっ、やめなさい、ミカエルっ!!」
「僕と地獄に墜ちてください、神父様」
ともだちにシェアしよう!

