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第41話 同族嫌悪

その日一日は納得出来ないことだらけで、仕事は身に入らなかった。 「しんぷさま?……神父様、どうかしましたか」 教会にミカエルが訪ねて来ていたのにも私は気付いていなかった。 「いえ、……なんでもありません」 「心ここにあらずという感じですね」 こんな少年までに私の気持ちが読めるなんて思いもしてなかった。 私が思っているよりもミカエルは人の気分に鋭いのだろう。 「ミカエルにお聞きします。教員のダニエルさんはどう思いますか」 「僕ははあまり好きになれないです」 即答した彼は、そのまま祭壇に向かい祈りはじめた。 「神父様、僕は同性愛者です。女より神父様のような美しい人を愛でたいです。でもこれは神の教えに背く禁忌だと自覚してます」 祈りながら禁忌を口にするとは、なんと愚かなことだと私は内心嘆いていた。 けれどミカエルはそのぶん自身に正直な少年で、それは彼の長所で素晴らしいことだ。 「僕は同族が大嫌いです」 「同族とはなんですか?」 「美しい男をが好きな、男を襲う奴のことです」 なるほど、だから今のセドリックをミカエルは毛嫌いしているのですね、妙に納得してしまった。 「ミカエル先生も僕と同じ志向の持ち主だと思います。だからあまり好きになれません」 「……そうですか」 ミカエルは自分に正直過ぎる少年だ、私も彼に襲われた身ではあるものの、ダニエル教官よりは歪んではいない。 まだミカエルは私にでも救えれそうな迷える仔羊だが、教官は私には救えないのだろう。 「神父様、今日は一段と憂いを帯びていて美しいです。ここで貴方を犯したら、僕は地獄に堕ちるでしょうか」 そんな言葉を耳にした瞬間ミカエルの身体が私に覆い被さり、押し倒されてしまった。 ミカエルの前でも気を抜くとは、私こそ救いようのない愚か者でした。 「やっ、やめなさい、ミカエルっ!!」 「僕と地獄に墜ちてください、神父様」

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