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第3話 邪魔する存在

 静かだな………。  小説の世界から、現実へと意識を戻す。  日が暮れてしまったようで、周りは薄暗く陰っていた。  いつもなら、序章の数頁も読み終わらないうちに声が掛かるのに。  いつの間にか、1章を読みきっていた。  誰にも声を掛けられない静けさに、小説に没頭していた。  今日は、帰るか……。  おかしいと感じながらも、文庫本にスピンを挟みつつ、顔を上げた。  視界の端に、人影を捉える。  大きな灰色のトートバックを肩から下げた男が、俺のいるベンチの端に座っていた。  3人ほどが掛けられるベンチの端と端。  人、1人分の空間を空け、俺から中途半端な距離を取り、男は座っていた。  こいつのせいか……。  ちらちらと盗み見るような視線を寄越す男に、俺は冷めた瞳で一瞥をくれる。  俺を誘うつもりなのかと思ったが、声を掛けてくる素振りもない。  それに、同じベンチに座るってコトはこいつもネコだろう。  周りを見渡せば、ぽつりぽつりと空いているベンチもある。  他にも空いているのに、あえて俺と同じベンチに座る意図がわからない。  こいつの存在が、俺への誘いを(はば)んでいる。  こいつがここにいるから、声が掛からなかったんだ。  邪魔すんなよ……。  じわじわと沸き上がる苛立ちに、俺は男をじとりと睨む。  鬱陶(うっとう)しげな俺の視線に気づいた男は、ぱちぱちと何度か瞳を(しばたた)く。  何か? とでも問うようなその仕草に、カチンと来る。 「なんのつもり?」  苛立ちを滲ませる俺の声色に、男は意味がわからないと言いたげに、ゆるりと首を傾げた。 「ここ、どういう場所か知らないの?」  地面を指差し、軽く睨みながら言葉を繋ぐ俺。

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