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第4話 ヌードモデルの依頼

 この界隈では、有名な場所だ。  子供が遊べる遊具類が無いコトも一因かもしれないが、子を持つ親は、あえてここに近寄らない。  影では、“ホモの溜まり場”なんて呼ばれ、倦厭(けんえん)されているのは、この辺の住人なら…そういう性癖の人間も、知らない者はいないはずだ。  周りを見渡せば、そんな雰囲気を醸す男たちがいない訳じゃない。  簡単に読める空気だ。 「あ、いや。知ってる、知ってるよ」  するっと視線を外した男は、なぜか頬を軽く朱色に染めた。  何かを迷っているかのように、男の瞳がきょろきょろと(およ)ぐ。  ふと、何かを決意したように戻ってきた瞳が、俺を穿(うが)った。 「モデルして」 「は?」  男の言葉に、俺は間髪入れずに素っ頓狂(すっとんきょう)な音を返した。 「ぁ、いや。…モデル、ヌードモデル探してて」  言葉を紡ぎながらも、男の視線は値踏みするように俺の頭の天辺から爪先までを舐めるように(うごめ)いた。 「探してたもの、…ど真ん中なんだよね。……すんげぇ、あんたのコト描きたいっ」  刺さる視線に、俺の心臓が、ドクンと跳ねた。  モデル……。  そんなコトをしたって、俺の欲求は解消されない。  なんのためにここに座ってるのか。  そんなの決まってる。  この身体を慰めてもらう為だ……。  好きだとか愛してるとか、そんな睦言(むつごと)はいらなくて。  ただ気持ちよく、身体に蠢く熱を発散したいだけなんだ……。  じっと俺を見やる男の視線が、……痛い。  俺に据えられた男の視線に、肌が焼かれている気がした。  男の瞳から注がれる熱量に、俺の心拍が意図せず上がる。 「モデル………ね」  焦がすような視線から逃げるように瞳を逸らせ、ぼそりと(つぶや)く。

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