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第11話 許す代わりに

 凄むように顔を寄せた俺に、動きを止めた男は、驚き瞳を瞬く。 「破る気だったろ?」  じとりとした瞳で睨みつける俺に、男はそっと紙を掴む指を開いた。 「いや、だって。勝手に寝顔とか描かれたら、薄気味悪いでしょ……?」  顔は描かないって言ったのオレだし…と、戸惑うように、男の瞳が俺から逸れた。 「…たくっ。自分の顔、破られる方がなんか嫌だろ」  呆れた声を放つ俺。  必要以上に接近したままに言葉を紡ぐ俺に、男の視線は下を向きながらも、きょろきょろと彷徨(さまよ)う。  まるで照れているかのようなその仕草に、胸がキュッとなる。  不覚にも、可愛いと感じてしまった……。  頭を振るい、感じたものを振り落とす。  俺は、恋愛したい訳じゃない。  好きだの嫌いだのそんな感情に踊らされたくない。  どうせ、苦い想いをするだけだから。  この腹底に蠢く熱を解消出来れば、それで良いんだ。  下がった視線に、男の股間が目に入る。  そこには、何の変化もないカーゴパンツ。  盛り上がりも何もない。  何の反応も示していない。  それでも、俺は煽られる。  服の中に隠された男のモノを見たくなる。  意識すればするほどに、悶々とした感覚が腹底で蠢いた。  俺は、しゃぶるのが好きだ。  口腔内で硬さを増し大きくなる感覚は、俺の性感を刺激する。  しゃぶらせてもらえれば、何もしないよりは、少なからず俺の中の欲求は満たされる。 「寝顔を勝手に描いたコト許すからさ、その代わり、しゃぶらせてよ?」  どうせ、これっきり。  こいつと再会するコトなんて無い。  思うままに強情(ねだ)ったって、恥ずかしさに後悔するコトなんて無い。

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