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第17話 これは、照れ臭い
シャワーの水音を聞きながら、ベッドで微睡 む。
悶々としたり、興奮したり、苛立ったり…、何だか疲れた。
がさりと衣擦れの音が立ち、空気が肌を撫でる。
戻ってきた男が、ベッドの中に滑り込んできた。
「何してんの?」
ぼんやりとする意識の下で、男の行動に疑問を投げる。
「パンツ乾くまで待ってる」
ちらりと向けられた視線の先、太腿の辺りが濡れてるカーゴパンツがソファーの上に放られていた。
「とりあえず拭き取って、帰って洗濯すれば良かったんじゃねぇの?」
男の顔が、固まった。
その手があったかという表情だ。
可笑しさに、ふっと鼻から息が漏れた。
何度となく瞳を瞬いた男は、そのまま肌掛けの中へと潜り込んでくる。
「……濡らしちゃったし。乾くまで居させて」
滑り込ませた身体で、男が、もぞもぞと近寄ってきた。
そのまま俺の腰の下に腕を捩じ込み、ぐっと引き寄せられた。
「なんだよ……っ」
抱き寄せられる身体に、大きな体躯に包まれる感触に、恥ずかしくなる。
「何でもない。そこに人肌の温もりがあったから、ちょっと、抱き締めたいなって……」
胸許に抱え込んだ俺の頭に、甘えるようにすりすりと鼻先を擦りつけてくる。
「女みてぇに柔くないから、抱き締めたって、気持ちよくないだろ……」
ぼそりと放った俺の言葉は、無言でスルーされた。
こんなまったりした時間、…求めてない。
愛し合ってる者同士みたいな、甘い空気は必要ない。
「ちょっとだけ……、このまま」
後頭部に回ってきた手で、ぐっと頭を抱きかかえられた。
パーカー越しに、男の胸に頭を預けさせられる。
さらに男の足が絡みつき、俺の身体をホールドする。
俺は、抱き枕かよ。
これじゃ、1人でヌくことも出来ねぇじゃねぇか……。
トッ、トッ、トッ……。
微かに響いてくる男の心音と、心地良い温かさが、眠気を誘った。
朝6時。自然と目が覚めた。
ふっと持ち上げた瞼に、気持ち良さそうに眠る顔が映り込む。
予想外の視界に、身体がびくりと跳ねた。
あ、そっか。モデル頼まれたんだったな。
夜のコトを思い出し、現状を理解する。
俺の身体を拘束してした手足は、放れていたが、頭の下には腕が残り、腕枕状態。
……照れ臭ぇっ。
男を起こさないように、そっとベッドを抜けた。
服を着て、メガネを掛け、文庫本を手にする。
備え付けの時計に2時間後のアラームをセットし、先に部屋を出た。
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