19 / 45

第19話 チラ見を叱られる

 その場所のルールは、知っていた。  普通にセックスをしようと持ちかけても良かったが、1回シたら、それで終わりのような気がして止めた。  身体だけが、セックスだけが目的だとも思われたくなかった。  この1回きりで終わりだなんて、嫌だった。  こんな綺麗な人と1度きりだなんて、勿体無い。  なんとか繋ぎ止めておけないかと絞り出した妙案が、ヌードモデルだった。  引き受けてさえもらえれば、まだ描ききってないからと頼めば、何度か会ってくれるかもしれない。  会うためには、連絡先の交換が必須条件で、上手くいけば、そのまま顔見知りや友人くらいにはなれるかもしれない。  オレの家でという提案は、危機感がないと却下された。  そのまま近場のホテルに誘われる。  本当にホテルなのか? と、疑いたくなるような佇まいに、らしくない外装に、思わず何度も視線を往復させた。  問い掛けに反応を示さないオレに、痺れを切らせた彼は、手を引き建物の中へと足を踏み入れる。  アナログ感溢れる質素な造りだが、清潔に保たれたその場所に、不快感はなかった。  連れられ歩くだけのオレに、彼は手際よく手続きを進める。  気付いたときには、部屋の中へと入っていた。  彼が払ってしまった宿泊費は、オレが出そうと思っていた。  モデルをしてもうんだからと、金を出そうとしたが、泊まるつもりで来ているから要らないと断られてしまう。  部屋に入った彼は、シャワーを浴びたいとオレの目の前で大胆に服を脱ぎ捨てていく。  服の下から現れた細いがしっかりと筋肉のついた体躯に、見惚(みほ)れそうになる。  堪らない……。  蠢く肩甲骨も。  括れた腰も。  キュッと上がった尻も。  綺麗な足のラインも。  じっくりと舐め回すように、視線で犯してしまうように、じっと見詰めたかった。  でも、そんなコトをすれば、押し倒したいという欲求が外に出てしまう。  盗み見るようにチラチラとした視線を送るオレに、いやらしい見方をするなと叱られてしまった。  ……なにやってんだよ、オレ。

ともだちにシェアしよう!