「お前が傍に居ると、誰にも声掛けて貰えないんだけど……？」 　俺の苛ついた声を浴びせられた男は、何かを紡ごうと開きかけた口を、きゅっと結んだ。 　モデルの依頼を引き受けてから、１週間後。 　平日は仕事に響きそうで、なかなかここには来られない。 　でも、しゃぶるだけで終わった前回に、身体は悶々とした熱を抱えたままで。 　いつものように、ベンチに座り、本を開いた。 　いつもと違うのは、またしても本に没頭できたコト。 　また、あの男が隣に座っていた。 　じとっとした瞳を向ける俺に、男は困ったように瞳を游がせる。 「また独りで慰めてろって？ 俺、なんかお前を怒らせるようなコトした？」 　モデルをして欲しいっていうから、してやった。 　モデル料として金を寄越せと、せびってもいない。 　寝顔を描かれて、恥ずかしい思いをさせられたのは、どちらかと言えば俺の方。 　しゃぶられたことが不満なのか？ 　あんだけ派手に飛ばしたんだから、スッキリしただろ…、何が不満なんだよ。 　無理矢理襲ったりもしていないし、怒らせるようなコトをした覚えは、微塵もない。 　俺の問い掛けに、何も返さない男。 　何を考えているか、……読めない。 「……邪魔すんなよ」 　探り疲れた俺は、捨てるように声を放つ。 　ここに来んの止めようかな……。 　決まり事も把握したし、変なヤツも少ない。 　相手を探す場所として、恰好の場所だったんだけどな…。 　性欲の発散ができないなら、ここに来る意味がない。 　俺は、諦め半分で空を見上げた。