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第23話 その相手、オレでも良くない?

「モデル料、セックスで、どう?」 「は?」  突拍子もない男の言葉に、俺は苛立つ声を返した。 「………あんたのコト、もう1回、描きたくて」  縋るような、乞うような瞳で俺を見る男。 「お前、無理だろ。ノンケ…、異性愛者だろ?」  眉根を寄せ喧嘩腰の視線を向ける俺に、男は、不思議そうに首を傾げた。  なんで、わざわざこんなことを問わなきゃいけないのか…。  ムカムカとする感情に、苛立つ瞳で男を睨む。 「オレ、抱けるよ? あんたのコト」  勝ち誇るような笑みを浮かべた男の手が、ゆったりと俺に伸びる。  俺の眉間に刻まれている皺が、男の親指で伸ばされる。  顔の前で広げられた掌が、俺の頬にふわりと触れた。  俺が服を脱いだって、…裸を見たって、勃たなかったじゃねぇか。  どの口が抱けるとか言いやがるんだよっ。  愛でるように触れられる頬が、熱くなる。  居た堪れない雰囲気に、瞳を逸らせた。 「慰めてほしくて、ここにいるんでしょ? ……その相手、…オレでも良くない?」  断りを入れないのをいいコトに、男は畳み掛けてくる。  悪戯でもするように、頬に触れている手の親指が、俺の唇をむにゅりと押した。  お前だから、嫌なんじゃない。  いざとなったら、使い物にならないのが、…やっぱり無理だと言われるのが、嫌なんだよ。  逸らせていた瞳を、男へと戻した。  男は俺の唇に触れながら、ねっ? と首を傾げてくる。  断ったとしても、こいつは諦めずに、ここに居座り続けそうな気がした。  わかったと頷くまで、延々と俺を口説きに掛かりそうな雰囲気だ。  ……まぁいい、ヤってみれば。  勃たなかったら、怖じ気づけば、諦めもつくだろ。  ……なんで無駄に傷つかなきゃいけねぇんだよ。  思いながらも俺は、男の取引に乗ってやるコトにした。

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