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第24話 初心なのか、大胆なのか

 前と同じホテル。  男が金を払い、俺の手を引き、部屋へと入る。  別に手なんて繋がなくとも、俺は逃げたりしない。  でも、俺が手を離そうとしても、男は掴み直してくる。 「どっちが先?」  モデルを先にするのか、セックスをするのかを男に問う。 「どっちでも……」  手を繋いだままに、俺を振り返りながら、男は小さく口角を上げる。  何がそんなに嬉しいのか。 「じゃ、セックスするか。シャワー浴びてくる」  俺を掴む手をやんわりと剥がし、着ているオーバーサイズのスウェットの裾を握る。  さっさとコトを終わらせようと動く俺に、笑んでいた男の顔が切なげに崩れる。 「なんだよ?」  文句を言いたげな瞳に、先んじて声を放った。 「空気。……もうちょっと気分、盛り上げたくない?」  拗ねたような顔で、俺に問う。  たじろぐとわかっているのに、わざわざムードを盛り上げ、どん底に落とされるなんて、御免だ。 「ムードなんて要らねぇだろ……」  男の指が、不貞腐れたように呟いた俺の顎を掴んだ。  持ち上げられた俺の勝気な顔が、男の悄気た瞳に映る。  男の口からは、むぅっと唸り声が聞こえてきそうだ。  じっと見詰めていた男の瞼が微かに下がる。  視線が、俺の唇に照準を定めていた。 「……キス、していい?」  そんなコトで盛り上がれるんなら、勝手にすればいいのに。  俺の答えを待っている目の前の唇に、ちゅっと噛みついてやる。 「いちいち聞くなよ。好きにすればいいだろ……」  したいと言ったのは、こいつなのに、俺の仕掛けに、驚いたように身体を後ろに反らせる。 初心(うぶ)なのか、大胆なのか、いまいち掴めない。

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