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第38話 何かが燻る <Side 柊
「……好きっ」
服に掛けた手首を掴まれ、唐突に告げられた。
いつものように、ホテルの部屋に入り、服を脱ごうとした瞬間。
傍に立っていたマコトの手が、痛いくらいに俺の手首を掴んだ。
「はぁ?」
急に何を言い出したのかと、眉根を寄せる俺。
「もう、気づいてるでしょ? オレ、……柊さんに惚れてんの」
真剣な眼差しで俺を見つめながら、緊張した面持ちで紡がれた告白の言葉。
勘違いしてはいけないと、再認識した直後に伝えられた言葉に、感情が混乱する。
気になりだした相手からの告白に、胸は踊る。
嬉しいはずだ。
喜んでいいはずだ。
なのに、心の底で焦げつくように、何かが燻る。
「最初に出会ったときも、他の誰かに持っていかれるのが嫌で、柊さんの隣に座ったんだ」
マコトは、強張った顔のままに、言いにくそうに言葉を紡ぐ。
そう。
俺とマコトの関係は、身体から始まった。
身体から始まって、なにも進んではいない。
「柊さんも、オレのコト、満更でもないよね? シたくなったら、呼んでくれるし……」
マコトの瞳が、一瞬で、淫靡な空気を纏った。
じっと見詰めるその先は、俺の唇。
「キスしようとしても、逃げないし」
数ミリの距離で紡がれる言葉に、俺は動かない。
避けるコトも出来るのに、俺はそれを受け入れるように、反射的に視界を閉ざす。
―― ちゅっ………
柔らかな感触が唇に触れ、小さなリップ音が、部屋に響く。
顔を離したマコトは、がばりの俺を抱き締めた。
ははっと響いたマコトの笑い声は、嬉しげに跳ねていた。
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