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第41話 薄くならないキスマーク
俺を見つけられたら付き合ってやると約束してから3週間。
何度となく、いつものように呼び出しもした。
俺の職種なり、最寄り駅なり、ヒントをくれと強情るコトもあったが、教えなかった。
別に期限があるわけでもない。
マコトが諦めるコトだって、ない訳じゃない。
探すのが億劫になり、恋人にならなくてもいいと、いつ言い出すのかと思っていたのに。
会う度に上書きされるキスマークは、薄まるコトを知らない……。
2階のホールで開催されている合同会社説明会。
たまたま人事の人間が風邪を引き、資料配りとかサポートだけで学生さんとの話はしなくていいからと連れて来られた。
休憩を取ってきていいと言われ、1階の自販機などが設置された休憩スペースに腰を下ろした。
エアコンの効きの悪い室内に、ネクタイを弛め、第1ボタンを外す。
暑さに瞳を閉じ、天井を仰いだ。
痛みや痒さがあった訳じゃない。
無意識に、キスマークを撫でていた。
―― ズッ、ズズッ
椅子を引く鈍い摩擦音に、瞳を向けた。
そこに腰を下ろそうとしている男に、目を見開いた。
スーツ姿のマコトが、そこに居た。
見慣れないマコトの格好に、瞳が逸らせない。
見つめ続けてしまった俺の瞳と、マコトの視線が重なる。
交わった視線にマコトは、にっこりとした笑顔を返した。
「柊さんでしょ」
すとんと椅子に座ったマコトは、確信を持って言葉を紡ぐ。
俺は、慌て瞳を逸らせ、知らん顔をした。
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