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大和-19

 タオルで擦っては痛いだろうと、大和さんは手にボディーソープをいっぱいつけて泡立てて、俺の体を全身くまなく洗ってくれた。立っているのがつらくてよろけたら、大和さんは椅子に座り、俺が膝の上に座る形になった。なんだか、お父さんに体を洗ってもらってる子供になったみたい…。  脱衣所でもバスタオルで優しくしずくを拭き取ってくれた。何もかもお世話させっぱなしじゃ悪くて、自分で拭きますって言っても、大和さんは聞いてくれない。 「パンツ穿かせてやるから、そこに座れ」  と、籐のスツールを指して言われたけど、お尻の周辺が痛くて座れない。アノ最中のときは興奮してわからなかったけど、後から痛みがくる。ヒリヒリして、まだ何か入ってるみたいな違和感もある。 「今、ちょっと…座れそうにないです」  情けないけど自分でパンツを穿く気力もなく、下着は無しで浴衣だけを大和さんに着せてもらった。 「あ…ありがとうございます…何から何まで…」 「気にするな。無理をさせた詫びだ」  その後はヒョイッと抱き上げられて、布団まで直行した。そのまま寝かされ、まるで病人になったみたいな気分だ。 「そうだ、喉が乾いただろう?」  大和さんは冷蔵庫からペットボトルのミネラルウォーターを出した。起き上がって“ありがとうございます”と、ペットボトルを受け取ろうとしたら、大和さんが自分で口に含んだ。俺の後頭部を厚い手のひらで支え、口移しで水を飲ませる。 「……」 「どうした、新太。顔が真っ赤だぞ」  だって、大和さんがそんな大胆なことをするから。ほんの数時間前、こんな関係になるなんて誰が予測しただろう? でも、もっとエッチなことをしたばかりだから、俺も大胆になれそう。 「もっと…欲しいです」 「ああ、いいぞ」  そうして何度も何度も、口移しで水を飲ませてもらった。口の端からこぼれた水は、大和さんが親指でぬぐう。水を飲み終えた後は、少し離して敷いてあった隣の布団をくっつけ、俺の隣で大和さんが肘枕で横になる。 「痛い思いさせて悪かったな」  額にキスされた。 「いいえ…、初めてだったから苦しかっただけで」  大和さんのペニスは大きい。毎回あれを受け入れるのかと思うと、ちょっと怖い。けど、エッチするたびにこうして優しくしてくれるのなら、怖い思いしてもいいかな。 「明日、腰がだるかったら海水浴じゃなく、観光地をタクシーで回ってのんびりするか?」  せっかく海に来たんだから泳ぎたい。でも無理だったら仕方ない。これから何度だって、大和さんと海に行けるから、来年にでもいっぱい泳げばいい。そのころには、俺の体も慣れてるかな…。俺は“はい”とうなずいた。 「観光地って、何があるんですか?」 「親戚の中でも高齢の人たちは、だいたい伊勢神宮に行きたがるな。ほかには水族館があるし、海で泳がなくても船でクルージングが楽しめるぞ。あとは食べ歩きなんかもいいな。手こね寿司とか、エスカルゴもうまいぞ」  大和さんに伊勢市の観光地を教わった。水族館ではアザラシやトド、ペンギンたちとふれあいができるそうだ。ほかにもレトロな町並みがあって、おいしいお店がたくさんあるらしい。明日が楽しみだ。もっとも、明日になって腰の辺りがどの程度回復するかにもよるけど。  もっと大和さんと話していたかったけど、これは早く寝た方がよさそうだ。でも、大和さんから衝撃的な事実を聞かされて……。 「新太、これ、俺が海でかけてたサングラスなんだけど」  ふわっと顔の上に乗せられた。 「サングラスってもっと視界が黒いと思ってたけど、これ意外とクリアなんですね」  強い日差しをさえぎるから、薄暗い世界を想像してた。乗り物の運転にも差し支えないほどの透明感だ。 「ああ。だからかけてないときと、まったく見え方は変わらないんだ」  大和さんがニンマリと笑う。 「唇の動きだって、よくわかるぞ」 「…あっ!」  じゃあ、俺が大和さんに“好きです”と唇の動きだけで伝えたのも……! 睡魔が襲いかけてきたのに、恥ずかしさでその睡魔はどこかへ行ってしまった。 「おやすみ」  と、おやすみのキスをもらったけれど、まともに寝られなかったらどうしよう。でも、そんな心配はなく、厚い胸板に抱かれて目を閉じていたら、安心感からか睡魔は帰ってきてくれた。ああそうだ、心配かけた中山に謝らなきゃ。などと考えることはあったけど、再び眠気に襲われた。大和さんのそばはなんだか心地よい。海で泳いだせいか、体が揺られているようだった。大和さんと二人きりで、誰もいない無人島の海で泳いでいる夢でも見そうで――  翌朝、大和さんのキスで目覚めた。 「誕生日おめでとう、新太」  そうだ、今日は八月二日。俺の誕生日、そして…。 「お誕生日おめでとうございます、大和さん」  俺からもお祝いのキスを返した。 「誕生日プレゼント、ありがとう。新太っていう、最高の恋人をプレゼントしてもらった」 「大和さん…」  寝癖でくしゃくしゃな俺の髪を撫で、大和さんは朝っぱらからそんな甘いことを言う。 「早朝の露天風呂に入るか?」  寝ぼけ眼で時計を見ると、まだ五時半だった。 「入りたい~…けど眠い…」  このまま大和さんの腕の中で朝寝坊したい…。でも起きないと朝食の時間になって、この状態を見られてしまう。それはちょっと困る…。なんてぐずぐずしてたら浴衣を脱がされた。見ると、大和さんも裸だった。 「ほら、シャワーで寝汗を流したら、露天風呂につかるぞ」  裸で抱き上げられ、風呂に向かう。大和さんの首筋に腕を巻きつけ、ぴったりと寄り添った。このままずっと、大和さんに甘えていたい…。額を大和さんの頬の辺りに擦りつける。 「新太は甘えん坊だな」 「駄目…ですか?」  こめかみの辺りにキスを落とされた。 「いや、嬉しいぞ。もっと甘えてくれないと、俺が寂しくて拗ねるからな」  どっちも、甘えん坊さんなのでありましたとさ。 ――魁大和、HAPPY END――

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