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ジルベール-17
キスした後は、何を話したかわからない。幸い周囲には見られていないだろう…と思うけど…。頭の中が真っ白になっていた。
それから迎えが来たと、ジル先輩の携帯電話に連絡があった。リムジンに乗ってからも、何を話していいのかわからない。俺からは話し出せずに、ジル先輩が何かを言って、俺がそれに答えるって感じだ。
今まで、普通に話せてたのに。急に緊張するようになった。この緊張感の原因は知っている。キスのその先にあるものだ。まだ体験したことのない予感が、俺から余裕を奪っている――
ジル先輩は家に入ると、部屋ではなく風呂の方に向かった。長い長い廊下の途中で、俺の方を振り返る。
「アラタ、いっしょにお風呂入ろうか」
「ええっ! いっしょに?!」
また、緊張で汗が噴き出る。
「恋人同士だから、いいじゃない」
ジル先輩…見かけによらず積極的なんだなあ。
「な、なんていうか…いきなりお風呂いっしょって…緊張します」
そんな俺の意見は聞き入れてもらえず、ジル先輩は俺の手を引っ張って風呂場に急いだ。
大きな鏡と籐のスツールがあって、脱衣場は広々としている。バスマットの隣のカゴには、昨日とは違う甚平が二組、それにバスタオルもそろえてあった。
「あ、パンツ忘れたね。タオル巻いて上がって、部屋で穿けばいいか」
ママンがいたら叱られるけどね、なんてジル先輩は無邪気に笑いながら服を脱ぐ。
俺も意を決して服を脱いだ。
シャワーの温度を調節して、ジル先輩がシャワーを浴びる。
透き通るような白い肌と金の髪はなんとなく女性的な感じがするけど、俺より背が高くて肩幅もあって、お尻が筋肉質でカッコいい――って、俺はどこを見てるんだ?!
「ほら、ちょうどいい温度だよ」
と、シャワーヘッドを持ったジル先輩に、頭からぬるま湯を浴びせられた。
「ほんとだ、気持ちいい~」
ガシガシッと、髪の汚れと汗をシャワーで流す。
最初は恥ずかしいなんて思ってたけど、思い切っていっしょに入っちゃえば、なんてことない。男同士だからかな。
「ジル先輩、髪を洗わせてください」
「いいの? ありがと」
椅子に腰かけたジル先輩の後ろに立ち、シャンプーを取って泡立てた。
「このシャンプー、いい匂いしますね」
「でしょ? お気に入りでね、寮にも置いてるんだ」
バラの匂い。ジル先輩の匂い。外国語のラベルだ。日本には売ってないものかな?
しっかり泡立て、爪で地肌を傷つけないよう、丁寧に洗った。
「気持ちいいよ~アラタ。美容師さんみたいだ」
「そうですか? へへへっ」
きれいに洗い終わった後は交代して、俺もジル先輩に髪を洗ってもらった。
「お客様、かゆい所はありませんか?」
「あ、その辺りが…。ああ、そう、そこ。気持ちいいです~」
なんて遊びながら。好きな人とお風呂に入るのも楽しいな。俺は何を恥ずかしがってたんだろう。
けど、ただ楽しいだけなのもつかの間、すぐに恥ずかしい思いをすることになるとは…。
「アラタ、体も洗ってあげるよ」
髪を洗った後、ジル先輩はスポンジでボディソープを泡立てた。立ち上がった俺の後ろにジル先輩が立ち、胸辺りに手を回す。スポンジを使わず、手についた泡で洗ってくれる。
「くすぐったいですよ~…」
胸をまさぐっていた手は、首筋を撫でる。その後は脇。そして、胸に戻る。両の親指の腹が、乳首を撫でている。最初はくすぐったかったけど、なんだか変な気分だ…。
「あふっ…」
「ここ、感じるの?」
耳たぶに唇がかすめる距離でささやかれた。
「わかんな…あっ」
「硬くなってる」
キュッと乳首をつままれた。
「あっ――」
指先が触れるだけでも体が反応するほど敏感になったそこを、ジル先輩は容赦なくこね回す。
「やっ…やだ…」
身をよじるとそこから手を離してくれたけど、今度はへその周りをいじる。その次は鼠勁部、太腿の内側と、泡だらけの手が移動する。
「可愛い…もうビクビク反応してるよ」
いつの間にか勃起していて、ジル先輩の手の動きに合わせてそこはビクビク跳ねるような動きをする。
…恥ずかしい…。さっきからずっと、見られていたんだ。
でもジル先輩はそこを触ってはくれず、今度はお尻を揉み始めた。
なめらかな指の動きが、尻の間を割って入る。怖くて、思わず力を入れてしまった。
「大丈夫。中に入れたりしないよ。周囲を触るだけ」
ジル先輩の言葉なら、信用できる。ゆっくり息を吐いて力を抜くと、指が再び尻の間を割って入った。
ひときわ敏感な所を触られ、我慢していても声が漏れてしまう。
「あっ…は…」
指がクルクル回り、時々、指の腹を押しつけられる。最初は違和感しかなかったけど、こんな所を触られているという恥ずかしさが、快感に取って変わる。
「やっ…、あ…」
「アラタ」
名前を呼ばれて振り向くと、唇が下りて来た。さっき、カフェでしたのとは全く違う、舌を絡めるディープキス。キスって、こんなに気持ちいいんだ。真正面から抱きしめられた。いつの間にか俺は、ジル先輩の背中に腕を回してしがみついていた。お互い抱きしめる力が強くなる。互いの体の間で、屹立したペニスが擦れ合う。
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