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ジルベール-20

 まだジル先輩は中で動かないけど、圧迫感が凄い。俺はジル先輩の首筋にしがみつくので、精いっぱいだった。 「アラタ…動くよ…いい?」  目を強く閉じ、うなずく。それと同時に、ジル先輩が腰を引いた。先端部分だけ、体内に残っているんだろうか。今度はまた、奥まで挿しこまれる。 「ぐっ…、ジル先輩…きつい…」 「ごめん、アラタ。もう少しゆっくり動くね」  さっきと同じ動作を、今度はスローモーションでしてくれる。けど、この体の中が壊れそうな感覚は―― 「ダ…ダメ…もう…きつい…」  きついんだけど、ジル先輩の先端が奥に届くたび、何ともいえない感覚がある。痛いだけじゃない、こんなの、初めてだ。 「ごめんね、アラタ…。つらいよね」  うっすらと目を開けると、強く目を閉じていたせいか、涙が一筋流れた。目の前には、心配そうな顔をしたジル先輩。 「うっ…ああっ」  ジル先輩が腰の動きを止め、俺のサオを扱く。愛してるよ、の言葉とディープキスを繰り返し、俺は果ててしまった。勢いよく飛んだせいで、顎の下にまでかかってしまった。 「はあっ…、ジル先輩…気持ちよかった…」  もう一度首筋にしがみつき、俺の方からジル先輩にキスをした。少し萎えかけていたジル先輩が、俺の中でムクムクッと大きくなるのがわかる。そのうち、息苦しいくらいの圧迫感に襲われた。 「やば…、アラタ…もうイッちゃうかも」  挿入してから、そんなに何度も腰を動かしてはいないはずだけど、そんなに俺の中は気持ちよかったのかな。だとしたら、嬉しい。この痛みは、何度か経験するうちになくなっていくだろう。  また、ジル先輩にキスをして、唇を触れさせたまま言った。 「イッて――ください」  思い切って足を上げ、ジル先輩の腰に絡めた。かなりキツイ体勢だけど、ジル先輩が気持ちよくなってくれるなら、何でも我慢できる。  よほど我慢していたのか、ジル先輩は二、三度腰を動かしただけで俺の中からペニスを引き抜いた。ズズズッと、体の中身が持っていかれそうな感覚のあと、ぽっかり穴が開いたような感覚。その後、おなかの上に生暖かい感触。ジル先輩は急いで引き抜いて、体の外で射精してくれたみたい。  大きく息を吐いて、ジル先輩は俺の上に倒れこむ。キレイな金髪に、俺の精液が絡まってしまった 「ジル先輩…汚れますよ」  背中に手を回すと、じっとりと汗ばんでいた。それは俺も。シーツがかなり濡れている。 「いいよ…後でシャワー行こ」  ぐったりとしているけど、このまま寝ちゃうんじゃないだろうか。そんな心配をしながら、金色の髪を撫でた。さっき髪を洗ったけど、こんな風にジル先輩の髪を撫でるのは初めてだ。手触りがよくて、気持ちいい。 「そんな風に撫でられたら、寝ちゃうよ…」  腹上死ならぬ腹上爆睡。いやいや、その前に汗を流さないと。 「じゃあ早く起きてくださいよ」  笑いながらジル先輩の体を起こそうとすると、ギュッと抱きしめられた。 「…自己嫌悪…」 「は?」 「アラタ…僕のこと嫌いにならない?」  そんな気弱なくぐもった声が聞こえる。 「どうしたんですか、ジル先輩のことは大好きですよ。俺にはもったいない恋人です」 「…早かった…」 「えっ…?」  突然ガバッと起き上がり、真上から俺を見つめる。青い瞳は真剣そのものだ。 「早漏だなんて、思ってなぁい? もっとアラタが満足するように、僕頑張るから!」  そんな心配をしていたなんて! またジル先輩の新たな一面をみてしまい、俺はどう答えてあげていいのかわからず、笑いを堪えてキスをしてあげた。  シャワーを浴び、ジル先輩の部屋に戻った。シーツも新しいのと取り替えている。  冷たいソーダを飲みながら、窓の外の星を眺めている。  京都の夏は暑い。そう言われるせいかもしれないけど、やはり暑く感じる。  クーラーをつけているから、窓は開けない。それでもきれいに磨かれた窓ガラスの向こうは、星が見える。ジル先輩によると、もっと山の方に行けば天の川までよく見えるそうだ。 「この部屋は南西向きだから、蠍座の上にへびつかい座が見えるんだ」 「あ、ほんとだ! わりと星がよく見えるんですね」  ジル先輩は、うちわでへびつかい座を指す。 「あのへびつかい座の下に、小さくて少し黄色っぽい星があるでしょ? あれが土星だよ」  目を凝らすと、小さな星が見える。はるか遠くにあるはずの星が、肉眼で見えるなんて。 「凄い! でも、輪っかが無いですね」 「うーん…。さすがに輪っかまでは、天体望遠鏡が無いと無理かな~」  なんて、涼しい部屋で天体観測をしていた。 「フランスでは、どんな星が見えるんですか?」 「緯度でいうとフランスは北海道と同じぐらいなんだけど、日本で見える星とあまり変わらないよ」  もしも将来、ジル先輩の会社で秘書として働けるとしたら、いっしょに海外に行くかもしれない。そしたらまた、こんなふうに星空を眺められたらいいな。 「ねえ、アラタ」  輝く青い瞳をこちらに向け、ジル先輩が天使の笑みを浮かべる。 「いつかいっしょに、南半球の星を見に行こうか。南十字星とか」 「偶然ですね。俺も海外でこんなふうにジル先輩といっしょに星を見たいって思いました」  ジル先輩が俺の肩を抱く。優しいバラの香りがした。 「蠍座なんか、日本とは逆に見えるんだ。だからきっと、面白いよ」  そうして眠くなるまで、ジル先輩と肩を並べて話をしていた。  今がとっても大切だけど、早く大人になりたい。いつかジル先輩と、俺の作ったウェディングケーキで―― ――ジルベール・マルソー、Happy End――

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