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イブ-16
イブ先輩の顔が、唇が触れそうな距離まで近づく。
「今からコレが、中に入るからね」
「ひぇっ!」
としか返事ができないまま、尻の間をぐいぐいと弾力のあるモノに押された。
「やっ…、入らな…、いたっ」
「力抜いて」
汗ばむ額にキスされ、イブ先輩がどんどん入ってくる。狭い穴を無理やりこじ開けられる。体が破れてしまいそうな衝撃に、涙がにじみ出た。
「怖くないからね」
目尻の涙を唇で吸い取り、優しく髪を撫でてくれた。怖いけど、イブ先輩を受け入れたい。イブ先輩だって、俺の中に入って一つになりたいって思ってくれてる。思い切って、全身の力を抜いた。ズブッと入ったのは、先端部分だろうか。それなら、一番太いカリ部分が入ったってことだから、もうこれ以上の苦しさは来ない――はずがやってきた。
「くっ…、ふっ…!」
狭い道をいっぱいいっぱい広げながら、イブ先輩が侵入してくる。凄く優しくしてくれてはいるんだろうけど、この太さはかなりキツい。
薄闇に浮かぶイブ先輩を、そっと見上げた。なぜだろう、真剣な目つきは怖いくらいで、性欲を抑えられない獰猛な野獣にでもなったみたいに見えるのに、それでも恐ろしいとは思わない。むしろ襲ってほしい――そんな欲望がこみ上げてくる。
「イ、イブ先輩…、もっと…もっと来…て」
「いいの? そんなこと言って」
頬を撫でられた。背中がゾクゾクする。
「はい…、イブ先輩に…めちゃくちゃ…されたい…」
「オーケー」
俺の手が、イブ先輩につかまった。両手の指と指を組んで、しっかりと離れないように力を入れた。
「ぐっ…、うっ…」
奥深くまで、イブ先輩が入った。もう、離れない。俺とイブ先輩は、完全に一つになったんだ。
いきなり、イブ先輩が腰を強く振りだした。
「ごめんっ、我慢…できない…!」
握った手に力を入れる。でも下半身は、余計な力が抜けている。激しい動きにつられ、いつしか俺も腰を振り始めていた。
「ああっ…もっと…もっと、イブせんぱ…あっ」
片方の手が離れた。その手は、俺のペニスを擦っている。
「あ…、はぁっ…」
前も後ろもイブ先輩に愛されて、もう意識が飛んでしまいそうだ。
ギシッギシッと体がきしみ出して、もう限界が来ようとしている。壊れてもいい。もっと愛して、めちゃくちゃにして!
「イブ先輩…、はぁっ…、好き…!」
「僕も…、くっ…愛してる…ハニー」
言葉に出すと、舌を噛みそうだ。言葉を出す代わりに、キスで愛を伝えた。激しく絡む舌がエロティックで、下半身を刺激する。
「んっ…ハニー…、もう…イクね」
キスの合間にイブ先輩がそう言って、腰の動きを速めた。下から激しく突き上げられ、俺は大声を出さないようにすることだけで、精一杯だった。
「くっ…、はぁっ…!」
体を弓なりに反らせ、まるで彫刻みたいにきれいなシルエットが、何度か体を震わせた。暗いオレンジ色のランプが、喉元を伝う汗を光らせる。
ズルッとペニスを引き抜かれ、圧迫感はなくなったけど違和感はまだある。体は楽になったけど、少し寂しいような…。
イブ先輩は俺がイクまで、ペニスを擦り続けてくれた。射精し終えた後、イブ先輩が丁寧に先端を舐めてくれた。
「やっ…やだ、恥ずかしい…」
きれいに舐めて、最後にチュッと先端にキスをされた。髪をかき上げて、妖しげな目つきで含み笑いをする。
「恥ずかしがり屋さんだね、ハニー。さっきは“もっと”なんておねだりしてたのに」
そうだ…。痛かったけど、いつもと違って野獣っぽいイブ先輩に襲ってほしいって、“もっと来て”なんて口走ったっけ。
「お、終わった後にそんな意地悪言わないでください」
イブ先輩が肘枕で俺の隣に寝っ転がり、髪を撫でてくれた。
「ごめん、ごめん。恥ずかしがるところも、すっごく可愛いから」
こうしてイブ先輩に髪を撫でてもらえるのが幸せだ。でも、野獣みたいなイブ先輩に襲われるのも、恥ずかしいことを言われていじめられるのも、幸せかも。
「…イブ先輩なら、意地悪されてもいいかも」
イブ先輩に抱きつき、汗ばんだ胸元に額を擦りつけて甘えた。“可愛いね、僕の子猫ちゃんは”と、イブ先輩は髪にキスを繰り返す。
時間も忘れて、ずっとこうしていたいのに。イブ先輩は明日、グアムでの撮影があるから日本を発つ。またすぐに会えるけど、いっしょにいられる時間を無駄にしたくない。
けど、こいつは邪魔をする。
“ぐ~~きゅるるる~”
そう、腹の虫が。クスクスと笑う声が、頭上から聞こえた。
「運動したらお腹空いたね。ルームサービスで何か頼もうか」
それからイブ先輩に抱き上げられ、バスルームに連れて行かれた。タオルは使わず泡をいっぱい使って、手で洗ってくれた。シャワーで洗い流すのも、バスタオルで体を拭くのも、全部イブ先輩任せ。
少しくらいいじめられても、構わない。イブ先輩は、こんなに優しいから。
その後食事をしながら、グアムでの仕事が終わったら次は日本での仕事だから、ハニーを呼んであげるよ、と約束してくれた。会えない日があっても、約束が二人を繋げてくれる。だから、寂しいのも我慢できそうだ。
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