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虎牙-18

 剣先輩が退院して、二週間になる。怪我で日常生活が大変だからと、家政婦さんは休暇を切り上げて戻ってきたそうだ。代わりの休みを、九月中に取るらしい。  もうギプスも取れたけど、しばらくは無理をしてはいけないらしい。何か手伝えることはないか――なんて剣先輩といっしょにいたい口実だけど――俺は剣先輩の家に泊まりに来た。  俺の泊まる部屋は前回の客室ではなく、剣先輩の部屋。その方が、怪我が治ったばかりの剣先輩のサポートができるし、家政婦さんも客室の掃除やベッドメイクなどの手間が省けるし。なんて、それも剣先輩といっしょにいたい口実だけど。  夕食と風呂が済んで、ソファーに座って冷たいジュースを飲みながら、二人で話していた。 「お袋、何で俺の気持ちをわかってたんだろな」  剣先輩にとって俺は“特別”。友達や先輩後輩ではない関係。もっともっと、お互いが大切な…。お母さんの白鷺澪華さんは、剣先輩の様子から、そのことに気づいてたみたい。 「だって白鷺さんは自分の息子の誕生日に、好物をいっしょに食べて祝う人でしょ? 剣先輩のことも獅子(レオ)さんのことも、きっとよく見てるんですよ」  仕事が忙しい人だから、家族といっしょにいる時間を余計大切にしていたのだろう。お父さんもお兄さんも、忙しい中を駆けつけてお見舞いに来た。それだけで、仲のいい家族っていうのがよくわかる。 「…俺も…剣先輩のことはよく見てますから、優しい人だってことはよく知ってます」  なんて生意気かもしれないけど。でも、剣先輩はもう喧嘩はしない。本当は喧嘩なんて大嫌いなんだ。だって、こんなに優しい人だから。おいしい料理を作れる人だから。  コトン、とテーブルにジュースのグラスが置かれる音がした。俺のグラスも取り上げられる。  急に剣先輩が俺をソファーに押し倒した。強引にキスされて、舌が入ってきて―― 「んっ…、や、やだ…」 「俺は優しくなんかないぞ」  ニヤリと笑うと剣先輩の手が、俺のパジャマの上から股間に触れた。恥ずかしさから足を必死に閉じて防御するけど、剣先輩は足を入れてそれを妨害する。手のひらの熱さが、布の上からでもわかる。  噛みつくようなキスと、荒々しい愛撫。“虎牙”の名前通りに野獣みたいな愛し方。俺は力が入らなくなってきた。 「ひゃっ」  パジャマの上をたくし上げられた。すでに硬くなった乳首に、剣先輩が吸いつく。  片方の乳首は吸われ、もう片方は指先でこね回され、おまけに股間も触られてる。もう頭の中がとろけそうなのに、さらに“愛してる”なんてささやかれたら、抵抗する気がおきない。激しい運動は駄目って、お医者さんに言われてるはずなのに。体に障りますよ、という言葉が出て来ず、喘ぎ声しか出なくなっていた。 「あ…ん…、剣せんぱ…ぁ」  するりとパジャマのズボンを下着ごと下ろされ、下半身があらわになった。愛撫で大きくなったそこを、剣先輩がじっと見ている。まるで、獲物を狙う野生の獣みたいに…。  ついでにパジャマの上も無理やり引っ張り取られて、全裸になってしまった。すぐに剣先輩は、俺のペニスにしゃぶりついた。 「ひゃあっ…!」  強い力で吸いつかれ、体がのけぞる。何かにしがみつきたいけど、ソファーだからシーツみたいなつかむ物は無い。剣先輩が、俺の腰をガッシリ抱えて、顔を上下させて唇で扱く。俺は剣先輩の手を覆うようにしがみついた。右手の甲の傷…目を閉じていても、指の腹の感触でわかる。少し斜めに入った傷。この傷でさえ、愛おしいと思う。  その右手が、お尻の下に潜った。尻の肉をかき分けるように入ってきた指は、俺の一番奥をとらえて―― 「あっ…、ああ…っ! そこは…、やっ…」 「お前が欲しいんだ、新太…」  目を開けると、剣先輩が覆いかぶさるように、俺を見下ろしていた。息が荒く、余裕がなさそうに、せつなく眉を寄せた剣先輩にはいつものクールさがない。その表情を見た途端、キュンと胸が痛くなって、俺は剣先輩の首筋に両手を回して引き寄せた。 「大好きな剣先輩なら…いいです。何をされても構いません」  怖いけど、めちゃくちゃに愛されて体が壊れてもいい。どんなに荒々しくても、剣先輩は優しい人だから。俺の、愛する人だから。  穴の周囲をいじっていた指が、少しだけ中に入る。緊張して体が強張る。 「力…抜いて」  耳元でささやかれ、耳たぶを軽く噛まれた。熱い吐息が耳の中に入り、それが全身を溶かす熱のようで、俺の体から力が抜けた。その途端、スッと指が中に入ってきた。 「んっ…、剣先輩…、そこは…あっ」  中でうごめく指が、時々感じるポイントを探り当てる。知らなかった、こんな所が気持ちいいなんて…。 「ん? 嫌か?」 「いや…じゃない…です…もっと…あぁ」  いつしか、催促するように腰を振っていた。しばらく剣先輩の指で愛されていたそこは、緊張も解けてほどよくほぐされたようだった。 「挿れるぞ」  と言うと同時に、衣擦れの音がする。パジャマを脱いで全裸になった剣先輩は、俺の腰を持ち上げた。…大きい…。真っ直ぐピンと伸びて勃起した剣先輩は、俺のよりもデカい。大丈夫だろうか、入るんだろうかと心配していたら、グイッと亀頭が押しつけられた。

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