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聖&たまねぎケーキ-4

「可愛いですね…そんな顔でおねだりするなんて」  ちゅっ、と音がして、耳たぶにキスされた。  聖さんの指で慣らされたそこは、もう聖さんしか受け入れない。ずっと待ってる。先端がグッと押しこまれる感覚があった。狭い道を通りやすいように、ふうっと息を吐いて力を抜く。 「あっ…ああ」  ズブズブッと一気に奥まで、聖さんが入ってきた。今まで聖さんの部屋ではエッチしてたけど、校内でこんなことするのは初めてだ。どうしよう…部室に入るたび、このことを思い出しそうで。ある日ふと鏡を見て思い出している自分の姿を想像してしまい、恥ずかしくてきつく目を閉じた。 始めから聖さんは、ハイペースで腰を動かす。さっきまで余裕で俺を煽っていたみたいだけど、逆に聖さんが我慢できなくなったようだ。俺も聖さんをもっと感じていたくて、必死に腰を振る。けど、先端で体内の奥を突かれて、そこは一番気持ちがいい所で、俺は立っているのがやっとの状態だった。 「くっ…、はあっ」  洗面台にしがみつく。危うく手が滑りそうになり、とっさに目を開けた。鏡の中の聖さんの表情が見えた。目を閉じて少しうつむき加減で、頬が赤い。こんな聖さんを知っているのは、俺だけなんだ。そう思ったら、急に下半身にジンジンと射精感がこみ上げてきた。  まるでその予兆を知ったみたいに、聖さんが俺のペニスを強く擦った。 「あっ…、聖さ…ん、そんな…強く…擦ったら…ぁ」  ヤバい。床の上に出してしまいそうだ。一応、お菓子作りをする場だから、清潔第一なのに。 「あ、新太…これに…」  聖さんの長い腕は、後ろ手でテーブルにあったキッチンペーパーの箱に届いた。そこから一枚抜き取る。厚みがあって柔らかな感触だから、ティッシュよりいいかもしれない。  聖さんからキッチンペーパーを受け取ると、俺は先端部分に当てた。 「新太…愛してます」 「聖さん、俺も…愛してます…。ああっ、もっと…きて…!」  全身が揺さぶられるほど強い腰の動きに合わせ、聖さんの手もヒートアップする。 「ふあぁっ…!」  キッチンペーパーのおかげで、周囲に飛び散らずに済んだ。  俺が射精したとほぼ同時に、聖さんは腰を引いた。ズルズルッと俺の中から聖さんが抜かれた。聖さんも俺と同じく、キッチンペーパーで精液を受け止めた。  このゴミは…普通の生ゴミでいいんだろうか。とりあえず、ビニール袋を二重にして丸めたキッチンペーパーを入れ、ゴミ箱に捨てた。  ああ…ゴミを捨てるときにも思い出しそうだ。万が一教室でエッチ、なんてことになったら、授業に集中できなくなる。それだけは避けてもらおう。 「鏡を見ながら――というのも興奮しますが、一つ欠点はありますね」 「け…欠点…?」  ようやく息が整い、服をなおしながら聖さんを見上げた。眼鏡を外した聖さんが、俺の顎をとらえた。目を閉じると、唇が重なった。重ねた唇から、荒い息が漏れる。そのうち、どちらからともなく舌を絡ませ、強く吸い、唾液が混じり合う。  行為はもう終わったというのに、これから気分が高まった二人が体を重ねるみたいな、激しいキス。  聖さんの唇が離れ、名残惜しさに唇を舐めると、濡れた唇を聖さんの指がなぞる。 「後ろ向きだと、キスがしづらいですから」  聖さんと目が合った。眼鏡の無い――普段は俺しか見られないような、“裸”の目。 「俺も…鏡に向かうのも、それはそれでいいけど、真正面から聖さんを見ていたいです」  今度は、俺からのキス。なかなか照れくさくて自分からはできないけど、“事後”のときには何となくできてしまう。 「厨房に戻らないといけませんね」  今度は、聖さんからのキス。何度も音を立てて唇をつつかれる。  そうだ、俺たちは小麦粉や砂糖を取りに来たんだった。 「そうですね、明日もまた、早起きして準備しないと」  大量の玉ねぎをすりおろさなきゃ。クッキーも焼いておかないと。明日の段取りを頭の中で考えながら、聖さんのキスをたくさん受ける。 「新太」  ギュッと俺を抱きしめ、聖さんが俺の耳元でささやく。 「明日は文化祭が終わった後、校庭でファイヤーストームがあるんですよ」  文化祭に使った、不要な飾り付けなどを燃やす儀式。有毒ガスが出ないように、燃やしていい物は学園側が指定して配布した素材に限るけど。 「ファイヤーストームの後、私の部屋に来ませんか?」  午後五時ですべてのプログラムや営業は終わり。ファイヤーストームがあって、夕食とお風呂と――消灯時間前の点呼までには部屋に帰らないといけないから、少しの時間だけしか聖さんと二人きりになれない。でも、その少しの時間でいい。聖さんといっしょにいたい。 「少しだけですが、お邪魔させていただきます。点呼まであまり時間がないのが残念ですけど」 「実はね、文化祭の二日目は点呼が無いのですよ」  そんなの聞いてない!   驚く俺に、聖さんが説明してくれた。 「二日目は後片付けなどで少々遅くなる生徒もいますので、そこは大目に見ているそうです。それを利用して、何人かで部屋に集まって打ち上げをする生徒もいます」  それを知らない人は、点呼が来るまで部屋でずーっと待ってるんだろうな…。 「なんなら、パジャマを持って泊まりに来てもいいですよ」  ファイヤーストームの後、俺はまた聖さんの腕の中にいるんだな。  俺は“了解しました”の返事の代わりに、背伸びして聖さんの首筋に腕を回し、キスを返した。 「もっとも――」  聖さんは眼鏡をかけて不敵な笑みを浮かべた。 「パジャマは私がすぐに脱がせてしまうから、不要かもしれませんね」 ――聖&玉ねぎケーキ Fin.――

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