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大和&和風パフェ-2

 結局、営業時間に大和さんが帰って来ることはなく、ファイヤーストームの時間になった。榊会長は、挨拶と点火が済んだら様子を見に行くと言っていた。ジル先輩、イブ先輩、剣先輩は最後のファイヤーストームに生徒会役員がいないのはマズい、ということで残った。  すっかり暗くなって少しひんやりする校庭の真ん中、きれいに組まれた木と、今年の装飾の紙類が燃やされる。音楽が流れ、みんな笑いながら騒いでいる。このお祭りが終われば、三年生は本格的に受験勉強だ。  中山たちもはしゃいでいて、ジル先輩やイブ先輩や剣先輩も俺に声をかけてくれる。  そんな楽しいファイヤーストームだけど、大和さんの方はどうだろう? 榊会長も挨拶の後、体育館に向かったきり。どうして戻れないのかな…。  火が燃え尽きて生徒たちが散り散りばらばらになるころ、温かい大きな手が、俺の頭の上に乗った。この手の温かさはよく知っている! 大和さんだ! 「よう、遅くなって悪かったな」  振り向くと、いつもの優しい笑顔。 「大和さん! 怪我した人、具合どうなんですか? 酷かったんですか?」  帰りが遅いため、相当大きな怪我だったんだろうと思ったけど、大和さんはニッコリ微笑んだまま。 「いや、怪我はかすり傷だ。舞台のライトが一つ、天井から落ちたんだ。素早くよけたから、幸いかすり傷程度で済んだ」  有志のダンスパフォーマンスの最中の事故らしい。運動部の人で運動神経がよかったから、落ちてくるライトをとっさによけることができた。本人は手当ても済んで、ファイヤーストームに参加もできたそうだ。大和さんは先生たちといっしょに、ほかのライトの点検をして回っていたせいで遅くなったようだ。 「俺の背が高いからちょうどいいって、高い脚立に上らされたぞ」  周囲にマットをたくさん敷き、先生が脚立を押さえて作業していたそうだ。後で様子を見に行った榊会長も、背が高いからという理由で点検を手伝ったらしい。 「そっか…、大したことがなくて、よかったです」  本来なら、不幸中の幸いと喜ぶべきなんだ。でも…。 「どうした、新太?」 「い、いえ、何でもないです」  大和さんは、生徒会役員として任務を果たしに行ったんだ。俺のわがままで困らせちゃいけない。 「何でもないわけないだろ。そんな顔して。遠慮して嘘なんかつくな」  いったいどんな顔をしていたんだろう、と考えていると、大和さんの手が頭の上に乗った。今日、二度目だ。この手に癒やされるの。 「あ…あの…、ファイヤーストーム…大和さんといっしょに過ごしたかったです…」 「新太…」  燃え盛る炎を、大和さんといっしょに見たかった。いっしょに過ごせた文化祭を、最後まで―― 「だって来年はもう、いっしょに見られないじゃないですか…」  炎といっしょに、文化祭の楽しかった二日間も、あっさりと消えてしまった気がした。しんみりしていたら、大和さんに頭をくしゃくしゃに撫でられた。 「そんな寂しいことを言うな」  そう、言ってはいけないことだ。大和さんは卒業してしまう。それは変えようのない事実だ。けど、寂しいだの悲しいだのと言う暇があるなら、二人の思い出をいっぱい作ればいい、大和さんはそう言ってくれた。だから俺は、部活も含めて学園生活を、大和さんとの時間を楽しんでいる。  そのために、ファイヤーストームもいっしょに楽しみたかったんだ。 「ごめんなさい…でも、大和さんと最初で最後の文化祭だったのに」  炎はもう無い。校庭のど真ん中に残るのは、燃えカスだけ。  燃えカスを、残ったみんなで片付けている。俺も手伝おうとしたら、大和さんに腕を引っ張られた。 「大和さん、どこ行くんですか?!」 「ないしょだぞ!」  ほとんど引きずられるみたいに、足の速い大和さんに引っ張られ、着いた所は三年生棟――大和さんの部屋だった。 「もう部屋に帰ってる奴もいるから、静かにな」  部屋のドアを開け、大和さんは人差し指を口元に当てる。最後までファイヤーストームに残ったみんなは片付けをしているのに、何だか悪い気がする。 「あ、あの…榊会長とか…生徒会のみなさん、片付けをしてるんじゃないですか?」 「してるだろうな。けど、たまにはいいじゃないか。来年はいっしょに文化祭に参加できないからな。その代わりに――」  そう言ってドアを閉めてから、大和さんは俺を抱きしめてキスした。ファイヤーストームぐらいの熱さを感じるキス。そのままベッドになだれこんだ途端、俺は大和さんに服を脱がされた。 「今から思い出を作ろう」

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