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ジルベール&ガレット・デ・ロア-4
ソファーの幅は狭いからと、体を裏返された。肘掛けの部分を枕にして、うつぶせの体勢だ。この狭い幅で背もたれもあるし、俺が脚を上げるのはつらいだろうからって、ジル先輩が上から覆いかぶさりながら言ってくれた。
「脚は閉じていて」
「えっ…このまま…? あっ…!」
両脚を閉じた状態で、後ろからジル先輩が入ってきた。
「楽な体勢だから、スッと入ったでしょ?」
確かにリラックスできる姿勢なんだけど…何となく恥ずかしい。でも、ジル先輩の肌がぴったり重なって、密着度が凄い。まさに一心同体って感じで。
「あっ…あ…」
いきなり速い動きで攻められた。ヌチッヌチッと、動くたびにいやらしい音がして、それが余計に恥ずかしさを増す。
「あ…そこ…」
ジル先輩の先端が、気持ちいい所に当たった。お互い手探りでどこが気持ちいいんだろうな、なんて感じでやってるけど、俺の中の気持ちいい部分は、ジル先輩がすぐに探し当ててくれた。
「ここ…ここがいいの…?」
知ってるクセに聞くなんて。恥ずかしくて黙っていたら、耳たぶにキスされた。
「正直に言ってくれていいよ。僕も気持ちいいから」
ジル先輩はいつも、恥ずかしがらずにハッキリと言う。まるで天使みたいに、心がきれいだからかな。そんな天使の心に触れて、俺も素直になれる。
「き…気持ちいい…。ジル先輩…が、して…くれるから」
もう一度、耳たぶが天使のキスを受ける。その後は天使とは思えないぐらい、激しい腰の動き。“嬉しい、アラタ”って言ってくれているみたいに、密着した肌からジル先輩の無言の言葉を感じる。
そのまま昇りつめてしまいそうなとき。急に動きが止まった。耳に柔らかい物が触れる。ジル先輩の唇だ。
「アラタ…お願いがあるんだけど…」
「おね…がい…?」
「最後のガレット・デ・ロアだけど、もし僕が食べてたら、フェーヴが当たってたかもしれないね」
俺はうつむいたまま、こくんとうなずく。
「ってことは、僕は王様だね。王様のお願い、聞いてくれる?」
王様なのに“命令”ではなく“お願い”だなんて、優しいジル先輩らしいな。
少し顔を横に向けて、王様に答えてあげる。
「何でも…仰せのままに」
耳たぶに触れた唇が動く。
「今夜…僕の部屋に泊まりに来て」
「泊まるって…点呼があったら、バレる…」
「大丈夫。文化祭の日は、後片付けなんかで遅くなる生徒が多いから、点呼は免除されるんだ。部屋で打ち上げやってる生徒もいるよ」
聖トマス・モアでは、自分の部屋以外の部屋に泊まるのは禁止されている。毎晩消灯前に点呼があるから、自分の部屋にいないと規則違反で謹慎処分になる。けど、点呼が無い文化祭の日は、数人で一つの部屋に集まってどんちゃん騒ぎもあるらしい。
それは生徒たちのうっぷん晴らしにと、黙認されているそうだ。
「はぁっ…ああ…ジル…せん…ぱ…」
腰の動きが激しくなった。俺はソファーの肘掛けにしがみついて、必死に声を殺す。
汗で座面にシミができないか、そしたら榊会長たちにバレないか、心配なんだけど。脚を真っ直ぐ伸ばした状態で上からジル先輩が重なってるなんて、とんでもなくエッチな格好に思えて、その恥ずかしさでいっぱいになって――
「アラタも…イッて…」
ジル先輩の手が、潜りこんできた。腰の動きに合わせているせいか、手の動きも早い。ダメだ、ソファーを汗以外でも汚してしまう…!
「うっ…」
小さい声を上げて、ジル先輩が果てた。俺も限界が来て、ジル先輩の手の中で思い切り出してしまった。うまく手のひらにおさまるわけはなく、少しソファーに散ってしまったけど、ジル先輩がきれいにしてくれた。匂いも残らないだろう…。
「ねえ、アラタ」
きれいにしたソファーに座り、俺に服を着せてくれながら、ジル先輩が言う。
「ウェディングケーキはクロカンブッシュもいいけど、ガレット・デ・ロアもいいかも。当たりの人何人かに、プレゼントしてさ」
将来の結婚式の話。まだまだ先なのに、ジル先輩は未来の会社や結婚式の話をするのが大好きだ。もちろん、俺だって。
「じゃあ、ウェディングケーキのクロカンブッシュのプチシューにフェーヴを入れて、それを切り分けて配るんです。フェーヴが当たった人は連絡をしてくれたら、何かプレゼントをする、っていうのはどうですか?」
「さっすが、アラタ! それいいね!」
ただの夢じゃない、現実にするんだ。話の続きはまた今夜、ジル先輩の部屋でゆっくり…。
――ジルベール&ガレット・デ・ロア Fin.――
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