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イブ&金時豆のチェー-3

 いつかそうなるって、イブ先輩の話を聞いたときから理解していた。今は学園生活が主体だけど、卒業すれば本業はモデル。海外で活躍するのは、イブ先輩にとって大きなチャンスなんだ。 「イブ先輩…アメリカに行っちゃったら…簡単に会えないですよね…」  俺の問いに対して、答えは無い。イブ先輩は、あえて答えないんだろうか。黙ってまた、髪をかき上げる。  そう、答えるまでもない、わかりきったことだ。もとより質問ではなく、俺が俺に対して改めて理解できるよう言い聞かせたことだから。 「新太はさ、卒業したら大学に行く? それとも、就職?」  俺は首を横に振った。 「まだ…決めてません」  聖トマス・モアに入学できた。それだけで舞い上がって、生徒会に毎日お菓子を作るのが楽しくて、おまけにイブ先輩と両想いになって。そんな幸せの毎日で、将来なんて考えていなかった。 「じゃあさ、僕の所においで」  暗い教室の中、イブ先輩の笑顔が街灯の明かりで浮かび上がる。 「アメリカに…住む、ってこと…ですか?」 「そうだよ」  髪をクシャッと撫でられた。 「僕はモデルの仕事を頑張る。ハニーは僕といっしょに住んで、何か仕事を見つけたらいいし、お菓子作りの動画で稼いでもいいし」  アメリカに住む。イブ先輩と―― 「い…いいんですか…?」 「当たり前じゃない。恋人同士なんだから。君に仕事が見つかるまで、僕が養ってあげる。だから、来年から仕事を頑張るんだ」  イブ先輩が机から下りて、俺を抱きしめた。 「僕なんてまだ駆け出しだから、今は収入少ないんだ。モデルって仕事は収入が一定しないし、世間で思われてるほど裕福じゃない。だから最初のうちは、少々両親に援助してもらうけどね。大切なハニーに、苦労はさせないよ」  イブ先輩と、アメリカに住む。同じ家で、俺は仕事から帰ってきたイブ先輩に、手作りのお菓子で労ってあげて――そうだ、ご飯も作れた方がいいかな。掃除や洗濯も、俺が頑張らないと。  でも、その前に両親に何て言って説得しようか。お姉ちゃんはどう思うだろう。俺がイブ先輩といっしょにアメリカに住むって知ったら。  考えることや課題はたくさんあるけど、今はイブ先輩と少しでも多くいっしょにいたい。触れていたい。俺はイブ先輩のシャツにしがみついた。 「…来て…くれるよね?」 「もちろんです、イブ先輩!」 答えた瞬間、体が離れた。顎がすくわれて、柔らかい唇が下りてきた。  長い長いキスの後、唇が触れるほどの距離で 「I love you honey,with all my heart.」  とささやかれた。俺だって同じ気持ちなんだけど、“愛してる”の言葉は照れくさくて、イブ先輩みたいにスマートに口に出せない。コクン、とうなずくだけで精一杯だ。 「ねえ…ハニーからは言ってくれないの…?」  いつもよりトーンの低い声が、熱い吐息といっしょに吹きかかる。声で肌の上を愛撫されているみたいで、それだけで体が反応してしまう。 「お、俺も…イブ先輩のこと…愛…して…ます」  愛してます、なんて初めて言った。“好き”よりももっと重い言葉。簡単には言えない言葉。 「英語で」 「えっ?」 「新太もアメリカに行くんだから、英語を話せるようにならないと」  そうだ。イブ先輩といっしょなら通訳もしてもらえるけど、四六時中いっしょってわけにもいかない。日常会話程度はアメリカに行くまでにマスターしないと。 「…I really love you」 「Good!」  英会話の授業よりも緊張したけど、イブ先生からご褒美をもらえた。言葉だけじゃなくて――俺を机の上に座らせジッパー全開にして、硬くなり始めたモノをくわえられ、イブ先輩の口での愛撫、というご褒美を。  イヴ先輩の世に知られている魔性は、ここでも発揮される。時々顔を上げて俺の目をじっと見る。その目の魔力に吸いこまれそうになり、一気に俺はイブ先輩の口の中で大きく硬くなる。 「あ…、イブ先輩…んっ」 「…いいよ、もっと声を出しても。どうせここには誰も来ないよ」  声を押し殺そうとしていたら、イブ先輩に言われた。   そうかもしれないけど、やっぱり教室の中っていうのは背徳感もあって気まずい。…いけないことをしてるっていう興奮もあるかな…。やばい、イブ先輩の魔性にすっかりやられてしまっている。  長い舌が、俺のサオの上を転がる。イブ先輩の舌は長いと思う。キスだって、器用だし。 「ねえ、シュガー…。我慢できないから、挿れていいかな?」  いやだ、なんて誰が答えると思う? 俺はひとつうなずくと、自分からスラックスと下着をずらした。  椅子を引きずる音がする。 「ここに座って」  薄暗がりの中、腕を引っ張られた。椅子に腰かけたイブ先輩の膝に座る形で、俺たちは繋がった。

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