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イブ&金時豆のチェー-4
「ん…、くっ」
ゆっくりと穴を広げながら、大きいイブ先輩が入ってくる。イブ先輩は仕事で忙しいから愛し合う時間が少ないため、そんなに何回もしているわけじゃない。だから俺のここはあまり慣れていない。挿入のたびに苦しい思いをする。
それでも、愛するイブ先輩を受け入れたい。お菓子を作ることしかできない俺だけど、イブ先輩の望みなら何だってしたい。…最終的には、俺も気持ちいいと思うようになるんだけど。
奥まですっぽりと入った後は腰を抱えられ、ゆったりとした動きで上下する。最初は擦れて痛いけど、徐々に慣れてくる。
「あ…あ…気持ちい…」
「僕も…気持ちいいよ、シュガー」
うなじの辺りに、熱い吐息を感じる。俺を抱きしめ、服の下から乳首をまさぐる手が、興奮のせいか少し震えている。おまけに、“ハニー”や“シュガー”なんて呼ぶ声も、熱い吐息にまじって苦しそうにも聞こえる。
雑誌やテレビでは作ったポーズや表情を見せるけど、今は素のままの自然なイブ先輩なんだ。誰にも見せない、俺だけの――
「んんっ…、イブせんぱ…、だめ、そんなに…、はっ」
イブ先輩の動きが速くなってきた。繋がっている部分が、二人分の熱を持っていて熱い。余裕がなくなってきたのか、ハニーもシュガーも言われない。荒い息だけが聞こえる。
どんな表情なんだろうか。後ろを振り向いて見たいけど、俺も余裕が無い。うっかり大声を出しそうになって必死に唇を噛み、イブ先輩の動きに体が揺さぶられるだけだ。
ああ、もっと。そう叫びたい。ここが教室でなければ。誰もいない世界だったら。イブ先輩もっと来て、愛してるって、叫んでいるのに。
「ん…もう、イクよ…」
細くて長い指が、俺のサオに絡まる。激しく上下に擦られた。どこを強く握れば気持ちいいのか、短い間に全て知りつくしてしまった手は、ただ擦るだけじゃない。根元やくびれを愛撫してくる。少し擦られただけでもう下半身に力が入らず、何も抗えなくなり、俺はあっさりと果ててしまった。
うなじに熱い息と、よく聞き取れなかった早口の英語を浴びた。その後、イブ先輩も俺の中で果てた。
イブ先輩は座ったままの繋がったままで、俺を後ろから抱きしめる。十一月なのに汗びっしょりで早くシャワーを浴びたいけど、今はこうしているのが気持ちいい……。
汗かいちゃったね、とイブ先輩の長い指が、俺の額に張り付いた髪を払ってくれた。“結合部分”は外したけど、まだ俺はイブ先輩の膝に座ったまま。
「シャワー浴びたいけど…イブ先輩と離れてしまうから嫌です」
そう言ってイブ先輩にもたれかかったら、“可愛いこと言ってくれるね”とこめかみにキスされた。でも、いつまでもこうしていられる訳じゃない。汗臭くなるし、お腹も空いてくる。
「アメリカに来てくれたら、毎日こうしていられるよ」
何度もこめかみにキスを受けながら、将来の俺たちを想像してみる。
マンハッタンの夜景を映し出したハドソン川がキラキラしてて、そんな景色が見えるマンションで、俺とイブ先輩がソファーに座って、俺が焼いたクッキーをおともにコーヒーなんかを飲んでいる。シンプルな部屋で観葉植物なんかもあって、おしゃなルームランプがぼんやり灯って――
「さ、シャワーして夕食に行こうか」
頭をポンと叩かれて、妄想から戻ってきた。ああ、その後はもうイブ先輩とは別々に眠るんだ。今度イブ先輩に触れることができるのはいつだろう?
しかし、イブ先輩はあっさりしてるなあ。エッチの後の余韻は無いんだろうか。
「…シャワーの後、いっしょにご飯食べても、夜は離れ離れですよね…寂しくないですか?」
「そうだね、離れ離れは寂しいよ」
答え方もあっさりしている。確かに、離れてしまうまでに一年以上はあるし、俺が卒業したらアメリカでいっしょに過ごせる。そうだとしても、今日このまま離れてしまうのは寂しいはずなのに。
「だってイブ先輩、アメリカに行くまであと何度こうしていっしょに過ごせるか――」
振り向いたと同時に、顎をつかまれた。そしてすぐに強引なほどの激しいキス。
「今夜は離れたりしないよ、My Boo」
「…部屋に戻ったら離れ離れじゃないですか」
俺もイブ先輩も二人部屋。どちらかの部屋に泊まることはできない。
「今日はね、特別の日なんだ。点呼が無いんだよ」
文化祭の二日目は、後片付けなどで遅くなる場合もあるからと、毎晩十時の点呼が無いらしい。しかも、後片付けでおそくなるからというのは口実で、この日だけは生徒たちがどこかの部屋に集まって打ち上げパーティーをするのを黙認されているからだとか。
「僕と同室の子ね、同じ部活の子たちで集まって夜通しパーティーでいないんだって」
その夜、俺はイブ先輩からのキスマークでいっぱいになりましたとさ。
――イブ&金時豆のチェー Fin.――
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