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虎牙&チョコレートフォンデュ-3

 剣先輩が入院していたときのことを思い出す。あのときは怪我で右腕が使えなかったから、お見舞いに持って行ったあんみつ風スイーツを俺が食べさせたんだ。  あのときは、嬉しいけど恥ずかしかった。その日に付き合うことにはなったけど、まだ恋人同士になる前だったから。 「先輩って…甘えん坊さんですか?」  それを聞いた剣先輩は、“フッ”とクールな笑い方をするけど、どこか照れてるみたいだ。 「そうかもな」  普段、イチャイチャできるチャンスが無い。せっかく二人きりなんだ。剣先輩には、思いっきり甘えてもらおう。先輩にこんな一面があるなんて、生徒会の三年生はおろか、もしかしたら親友のイブ先輩だって見たことないかもしれない。ちょっと優越感?  フォークを柔らかいフォンダンショコラの真ん中に刺して割った。焼きたてでフワフワの生地の中から、とろりと濃厚なチョコレートが流れ出す。一口サイズに切って、生クリームたっぷりのとろけるチョコレートを絡め、剣先輩に食べさせた。 「…うん、うまい」  気に入ってもらえてよかった。剣先輩だけの、特別なスイーツ。そうだ、バレンタインはどうしよう。チョコレートは今回使っちゃったしなあ。生徒会でも何度もチョコレートのお菓子は作ってるし。ありきたりの物はつまらない。うーむ、悩む。  なんて贅沢な悩みに頭を痛めながら、剣先輩にフォンダンショコラを食べさせ続けた。 「ブラウニーやパウンドケーキよりも、俺はこっちが好きだな」 「本当ですか? 剣先輩に気に入ってもらえたなら、何度でも作りますよ」 「じゃあ、毎年誕生日はフォンダンショコラな」  また、頭を撫でられた。そうだ、次は何かアレンジを考えよう。フルーツを入れてみるとか、市販のお菓子を使うとか。また一つ、楽しい悩みが増えた。 「フォンダンショコラは、俺だけのお楽しみだからな」 「それって…生徒会には持って行っちゃダメなんですか?」 「ああ。みんなが知らない、俺だけの遠野の味が一つはあってもいいんじゃないか?」  甘えん坊さんの剣先輩が、そんなふうに俺を独占してくれる。普段から寡黙でわがままを言わない人だけに、ついつい言うことを聞いてしまう。 「わかりました。フォンダンショコラは、剣先輩だけのものですよ」  最後の一口を食べさせた。チョコレートがフォークの柄を伝い、俺の親指についた。剣先輩が、俺の手首をつかむ。そして親指に舌を這わせた。温かく濡れた感触に、背中がゾクゾクする。最後にこうして剣先輩が俺の肌に舌を這わせたのは、いつだったか。そんなことを思ってしまうほど、俺と剣先輩はスキンシップ不足だ。  だから、この行為が引き鉄になった。手首をつかむ力が強くなる。剣先輩の目つきが変わる。飢えた獣みたいな鋭い、野性的な目に。  何も言わないのに、お互いの気持ちが一つになった。“繋がりたい”って、剣先輩の目が、手首に伝わる体温が、それ俺も表情に出てしまっているんだろう。  吸い寄せられるように、唇を重ねた。二人っきりだけど、学園内の食堂だ。そのうち見回りの警備員さんが来るかもしれない。それまでの間なら――急いてる気持ちが、お互いの欲望に拍車をかける。唇が合わさったと同時に、どちらからともなく舌を絡め合った。剣先輩の手が、俺の後頭部を強く引き寄せる。 「んっ…、ふうっ…」  密着度が高すぎて、息苦しい。ほんのわずかな隙間から呼吸をする。それでも絡まった舌は離れない。その苦しさだって快感になる。次はいつ、こうしてキスができるのかわからないから、苦しくても離れない。チョコレートの味が残る舌を味わい、熱い吐息を感じる。この感触を、いつでも思い出せるように――もっとも、急に思い出したりしたら、俺の下半身がヤバいんだけど。特に授業中とか…。  そう、すでに俺の中心は硬くなっている。それを知っているかのように、剣先輩の手が伸びてきた。 「あっ…せんぱ…」  ダメ、なんて言ってる余裕は無い。恥ずかしがってる時間も無い。俺も、すぐに剣先輩が欲しい。股間に手を伸ばすと、剣先輩もすでに硬くなっていた。スラックスと下着の上からなのに、ギュッと握れば形がよくわかる。くびれの部分を撫でると、布の下でビクンと跳ねた。  その刺激で触発されたのか、剣先輩は俺のジッパーを下ろし、中からサオをかき出して直に擦った。そんなことをされては、俺も負けていられない(?)。剣先輩のジッパーを下ろし、俺ももの凄い勢いで擦った。 「と、遠野…、待て」  待てという言葉も聞かない。俺は今すぐ剣先輩と繋がりたい。あまり強く擦ると、イッちゃうかもしれない。先輩だって早く挿れたいんだ。だから愛撫もそこそこに、剣先輩はベルトを外してスラックスを下着ごと少しずらすと、俺も同じように下着ごとスラックスをずらした。

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