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第4話

「おまえは俺のものだ」  低い声で囁かれ、背筋がゾクリと凍った。  もう逃げられないと悟ると諦めがついて力が抜けた。 「おまえは賢いな。そのまま力を抜いていろ。痛めつけるつもりはない」  その言葉はとても柔和に感じた。労るような声だった。  やがて熱い楔がシアンの後ろに宛がわれる。グッと中に楔が突き立てられ一気に侵入してくる。 「うっ、あっ……」  裂けてしまいそうな大きな熱で鈍い痛みが走る。額に嫌な汗をかき、下唇を噛んだ。  その唇に王子の唇が重なり、ゆっくりと解かれる。そこにはなぜか慈しみが感じられ、シアンはその熱い塊を奥へと受け入れた。  王子の熱が内襞にまとわりついてその形を覚えようとする。じんわりと蠢く内襞に王子の熱がピクピクと痙攣している。  そのままじっと動かないで、王子にしがみついていると耳元で王子が息を吐いた。  綺麗に結われていた髪が乱れてシーツの上に広がる。 「綺麗な赤だ」  指先に髪を絡ませ、そこに口付けを落とされドキリとする。  髪を綺麗だと言われたのは初めてだった。  真っ赤な髪に口付けをされたのも。  けれどこの行為にどんな意味があるのか。自分を妻にしてどうするつもりなのか。  だいたい、妻と言うことは結婚をするという意味ではないのか。王族の妻というものがどういうものかは詳しく知らない。奴隷には教育を受ける権利などない。自分で勉強するしか。  最初は奴隷生活から抜け出したくて主人に内緒で学習しようとする者もいた。けれどすぐにみんな諦めてしまう。労働がきつくて一日が終わると疲れ切ってすぐに眠ってしまい、勉強どころではなくなるからだ。  だからシアンの知っている知識は同じ歳の普通の少年、少女たちより少ない。 「あっ」  しばらく二人とも動かずにいたから油断していた。王子が急に腰を動かしはじめたのだ。  ゆっくりと王子の熱が引き抜かれていく。ギリギリのところまで引かれた熱に寂しさを覚え、王子を見る。  王子もこちらを見ていたため、視線が思い切りぶつかった。  シアンがなにを思ったのか、王子には筒抜けだったようでシアンは顔を真っ赤にした。  抜かないでくれ、と懇願する視線を投げかけると王子はそれに応えるかのようにギリギリまで引き抜いた熱を勢いよく奥まで突いた。 「ああっ……」  腰を浮かせてその衝撃を全身で味わった。  目の前がチカチカとする。 「痛くないか?」  荒い息を吐きながら王子が問う。 「は……あ……わか、ない……」  内臓が圧迫されるような息苦しさに短い呼吸を繰り返す。  本来ならなにかを入れる場所ではないところに入っている王子の熱が腰の動きに合わせて出入りする。  抜けるか抜けないか、そんなギリギリの場所ばかりを執拗に突かれシアンは焦れて王子を見やる。わざと焦らしていることは王子の表情を見ればよくわかる。 「あ、ああっ……や、やだ……」  香油のせいなのか繋がっている場所がじんじんとしてきて、もっと強い刺激を求めはじめている。  初めて男に抱かれたのに、こんなに簡単に中まで入り、じわじわと快楽まで感じるようになるなんてあり得ない。香油の成分が身体の感覚をおかしくさせているとしか思えない。そうであってほしい。  でなければ自分はとても淫らな人間なのだと認めてしまうことになる。 「あっ、やっ、あっ……」  散々焦らされたあと、熱はシアンの中を抉るように奥へと入り、激しく腰を打ち付けてくる。  ベッドの上で腰の動きに合わせて揺れる身体は知らず知らずのうちに気持ちの良い場所を探して自ら動いていた。  入り口付近から、最奥へ。何度も行き来する熱と、香油。  王子が腰を振るたびに水音が響き、シアンの鼓膜の奥まで犯していく。 「はぁ……あ……」  王子から汗が落ちてくる。  その汗を拭うように手を伸ばして、王子の乱れた髪をかき上げると紺碧色の瞳がシアンを射貫いた。  その瞳の強さと深い色に少しだけ残っていた理性が崩壊した。 「王子……おねが、いっ……」  焦れた身体は熱病に魘されたように燃えていた。  その赤い髪の色と同じくらいに。 「もっと奥……」  自ら身体を捩って王子の塊を誘い込む。  奥へ、もっと奥へと。 「はっ、あっ、ああ……」  シアンの無自覚の誘惑に王子の楔も一層、屹立しシアンの中を蹂躙する。  ポタポタと落ちてくる汗がシアンの胸に落ち、それすら刺激になってビクビクと痙攣する。  グッと奥の一部を抉る王子の楔に強烈な衝撃を受け、叫び声に似た喘ぎを漏らす。 「ここがいいのか?」  耳元で囁く王子の声は艶めかしく、シアンの背筋がゾクリと粟立つ。 「そこっ……そこ、いいっ……」  もっとして、と呟くと王子はニヤリと笑んだ。  シアンの腰を掴み、執拗にその箇所を攻める。抉られて身体がベッドの上で何度も跳ねる。攻め立てられるたびにおかしくなっていく。  これが快楽。人間の欲望の一つ。  奴隷でいたら知らないままだったかもしれない、最高の愉悦。  王子の息が上がっている。腰を掴んでいた手がシアンのモノを握り香油で濡れたそこを扱いていく。  ――溺れてしまう。  王子から与えられる快楽に溺れて、ベッドの海に沈んでいく。  海なんて見たこともないのに、目を閉じると瞼の裏に海が見えてくる。それは王子の瞳の色と同じ色をしていた。  波に飲み込まれて浮遊する身体。  気持ちいい。気持ちいい。もっと気持ちよくなりたい。  頭の中はそればかりで、他には何も考えられない。  グリ、と抉られた箇所と扱かれてしとどに鈴口から溢れる蜜。 「やっ、も、イくっ……出ちゃう……出っ……」  首を横に何度も振りながら絶頂を迎える瞬間を回避しようと試みるが、王子は動きを止めずにさらに攻める。  動きが強く速くなる。意識が飛んでしまいそうだ。 「ああっ……!!」  真っ白になった瞬間、二度目の欲を放ち身体の奥に熱いものを感じた。王子もシアンの中で達し、力尽きてシアンの上にのしかかった。 「……はぁ……はぁ……」  呼吸が荒いままの王子の背中にそっと手を回してみる。  王子の肌はしっとりと汗をかいていて、シアンの手にピタリと吸い付くようだった。  奥の方がまだ熱くて、溶けだしてしまいそうだ。  吐き出された熱がじんわりとシアンの中に広がる。それが何故だか心地よくて、微睡みはじめると中に残されたままの王子自身がピクンと反応してまた堅さを取り戻した。 「まだ寝るな」 「え……」  ぼんやりとしていたシアンの中を再び王子の熱が動き出した。  香油と王子の欲が混ざった液体が淫猥な音を立てはじめた。 「まだだ」 「ちょ……あっ」  繋がったまま身体を持ち上げられ王子の膝の上に座らされる。不安定な姿勢に王子の首に巻き付いた。  王子の手がシアンの赤い髪をかき乱す。乱暴なその手つきがやけに情熱的で情欲を煽り立てる。 「はっ、あっ……」  下から突き上げられそれまでとは違う箇所を突かれる。  ずっと深い奥へと楔が入り込んで、また新しい刺激を与えられる。  熱い欲がその中に放たれ、どくどくと脈打つのを感じながら三度目の絶頂に落ちる。  このままずっと抱き合っていたい。もっと淫らに荒れくれていたい。  無理やり、陵辱されて快楽を植え付けられてしまった。嫌なはずなのに拒絶できない。  もうこの身体は元には戻らない。戻れない。  求めあう悦びを知ってしまったから――。

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