11 / 43
第2章 白き海賊船ルナティス *4*
達したばかりの感じやすい身体に、ウルフは緩く腰を打ちつけてくる。
焦らされるような動きに堪らない疼きが、身体の奥底でとぐろを巻いた。
「は……ん…………、あああぁぁ……ッ」
裡襞が咥えこんだ雄をひっきりなしに締めつけてしまう。
バカみたいに感じてしまって、分かっていてもどうしようもなかった。
軽く揺さぶられてヒクつく腰は、新たな刺激を求めて勝手に揺らいでしまっている。
ウルフが含み笑うと、振動が繋がった部分から伝わった。
「足りないか?」
耳許に落とされた囁きは蠱惑に満ちている。
「『もっと』って言ってみな」
「……ん……う」
シーツに顔を押しつけ、カシスはくぐもった呻きを洩らした。
甘い誘惑に、気を抜けば陥落してしまいそうになる。背後から貫かれたままで、下肢は再び絶頂を求め震えだしていた。
緩く突き上げてくるもどかしい刺激が、カシスの意識を混濁させる。
身体が求めるままを口にしてしまいそうになって、カシスはしきりに声を噛んだ。
もっと……もっと、と……。
望むままを与えられて、自分がどうなってしまうのか分からない。
享楽に溺れてしまって、きっと自分は自分でなくなる。
自分自身を保てなくなることが、カシスには怖くて堪らない。快楽だけを求めるにはカシスはあまりに純真すぎた。
「どうした? イカせて欲しいだろ?」
ほらと言うようにウルフはきつく最奥を突き上げてくる。カシスの背がビクンと跳ね上がった。
「や……あ……っ」
数度突き上げ、また緩やかな動きに戻る。
背筋に宥めるようなキスを受けただけでも、敏感になった身体はビクビクと震えた。
「お前の方から欲しがってみせろよ」
わけの分からない言葉を口にしたウルフは、カシスの中から己を引き抜く。
ズルリと抜け出る生々しい感触に、カシスは息を詰めた。急な喪失感に物足りなさを感じて、裡襞がやるせない蠢きを繰り返す。
うつ伏せだった身体が表に返され、大きく開いた脚の間にウルフが身体を滑り込ませてきた。
「『イカせて欲しい』って言ってみろ」
熱い昂ぶりが中に押し入ってくる。
深みを抉られ、待ちわびた刺激に背が反り返る。
「んああああぁぁぁ―――!」
強烈な快感の波に全身が総毛立った。前に添えられた手で根元を戒められていなかったら、すぐにも達していたに違いない。
「あ……あ……」
呼吸が追いつかず、口をパクパクと開いてカシスは喘ぐ。
奥まで穿たれ、脈打つ熱に瞼の裏が白く霞んだ。零れ落ちる涙に視界はとっくにぼやけている。
ほんの少しだけ息が整うのを待って、ウルフの腕がカシスの背にまわされた。腰の後ろを抱え上げ、抱き起こす。
ベッドに肩肘をつき僅かに上体を起こす姿勢で寝そべったウルフの上に、カシスは座り込まされる。
「ヒァッ……、……ん……っ」
ウルフの腹部についた手を、カシスは突っぱねた。膝に力をこめ腰を浮かせる。
しかしそう長くは抵抗も続かなかった。
ウルフの腰を跨ぐ格好で、カシスの身体は強引に引き降ろされる。
「くぅ……ッ」
下から潜りこんでくる雄を、自らの重みでより深くまで飲みこんでしまう。
軽い突き上げにカシスは四肢を強張らせた。
「ん……ん……」
引き攣る脚で必死にウルフの腰を挟み込む。下からの突き上げが堪らなくて、そうせずにはいられなかった。
「や……ッ、……んう…………ああぁぁ……ッ」
やめて欲しいと訴える声すら、喘ぎに掠れる。
ウルフの手がカシスの後頭部を掴んだ。強く引かれ上体が捻じ曲げられる。
唇が重なり、舌が挿し込まれた。
縮こまった舌が絡み取られ、キスが深くなる。
欲望に濡れたキスは甘くて、なぜだか優しい。
「あ……あう…………、あああぁぁ……っ」
唇が離れると、殺し損ねた嬌声が止めどなく洩れ出た。愉悦の波に翻弄される身体を取り繕うこともできない。
「自分で動いてみな」
意地悪な声が強要を孕んで告げる。カシスは弱く頭を振った。
「や……ッ、……できな…………」
「できるさ。少し腰を浮かせるだけでいい」
無意識に浮かせた腰が、力強い手に引き戻される。とたんに脊椎を駆け上った電流とも似た痺れに、カシスは背を撓らせた。
「ヒッ……、あああぁぁ……!」
倒れこみそうになった身体をウルフの腕が支える。
「その口でねだってみせたってイイぜ?」
「あ……ああ……ん……っ」
「カシス?」
「や……やだッ……、……きない…………できない」
「『イカせて下さい』だろ?」
ひと言だ。
そうしたらもっと感じさせてやる。
囁く声の淫蕩さに、カシスは咽喉を震わせた。
「……かせて…………も……願いだから……」
見えそうで見ない終わりが欲しくて、カシスは思わず口走っていた。
ウルフの双眸が満足気に細められる。
「ああ、イカせてやるよ」
下から繰り上げる動きに、カシスの身体は激しく揺さぶられた。爪先までがビインと撓る。
「やああぁぁぁ―――ッ!」
勢いをつけ突き上げられて、堪えきれずにカシスは欲望の飛沫を迸らせていた。
ともだちにシェアしよう!