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第28話
「ごほごほ、ゴホ…、お坊ちゃんは一体何を始めるつもりなんだ?」
「聞いての通り、貧民街の人に読み書きを教えるんだ」
「お前一人で出来るのか?」
「フィオだけじゃない。オレも手伝うぜ!」
そこへアカネが立ち上がり、どんと自身の胸を叩いた。アカネも読み書きができるから心強い。教える側の人数が増えれば、教えを受けられる人数も増えるのだから。
「ありがとう、助かるよ」
「言い出しっぺはオレだからな」
「ふーん、せいぜい頑張れよ」
「もちろんだ。アカネ、明日から準備を始めないか?」
「ぅえ、明日?」
識字率を高めるには時間がかかる。数年単位で考えるべきだが、始めるのが早いに超したことはない。
けれど彼の都合とは合わなかったようで。
「明日はちょっと、無理かな……」
「予定でもあるのか?」
「うん、一応」
意味ありげに視線を逸らされたので、フィオも不審がって問い詰めてしまう。
「今朝もどこかに出かけていたが、それと関係があるのか?」
「まあな。さ、最近友達に頼み事されて、それで……」
あまり尋ねても答えてもらえなさそうだ。適当な所で切り上げておくが、一つ気になるところがあった。
(さっきはハンスのことを有耶無耶にされてしまったし、もしかしたら……)
嘘をついてハンスの店に出入りしていることもあり得る。疑いたくはなかったが、レノルフェの話を聞いて、アカネを彼の所に行かせない方が良いと思えてきたのだ。
「おいお前ら、ここで喧嘩とかすんなよ。とっとと飯食って寝るぞ」
「あ、済まない」
「大丈夫だよレノ、ケンカなんてしないから」
な? と同意を求められ、フィオは大きく首を縦に振る。
だが心の中ではフィオも予定を変更させて、アカネの秘密を探ろうと決めていた。
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