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第17話
そっと触れると、遥人の唇はかすかに震えていた。
ゆっくり圧をかけると、柔らかな感触が拓の全神経を巡った。
キス、した。
遥人と、キスしたんだ。
歓喜に、興奮する。
全身が、熱くなる。
しかし、唇を離すとともに、遥人の姿はかき消えた。
(やっぱり、夢なんだ)
それにしても、やけに現実的な感覚を伴った夢だ。
いつまでも、目が覚めないのもおかしい。
奇妙な気持ちに襲われていると、もう一度他人の声がした。
「いや、これは夢ではない」
仰天して声の方を見ると、そこには黒いスーツを着た男が立っていた。
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