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第42話

 拓の顔が、唇が近づいてくる。 「ちょ、たっくん! 近い、近い!」 「遥人……、遥人ぉ……」  拓の唇が、遥人を捉えた。  柔らかな感触。  滑らかな舌。 「たっ……くん……」  見える。  制服を着た、15歳の拓先生が。  いや、たっくんが。  やつれて、ビール片手に携帯を見つめる、たっくんの姿が。  虹色のシャボン玉が、ぱちんと弾ける心地がした。

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