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Ⅲ
「何?葵斗にゃ珍しく寝坊でもした?」
週に一回は必ずと言っていいほど、寝坊で朝礼の最中に登校してくる零央にそんな台詞言われるなんて、おしまいだ。
「寝坊じゃないですー。雨のせい」
「雨のせいって、面白い反論」
ニカッと笑って、「間に合って良かったな」と僕に一言残すと、先生が教室に入ってきてHRが始まった。
休憩時間もお昼休みも僕と零央は基本二人で過ごしていた。
人気者の零央だから、廊下を歩けば男女共から名前を呼ばれて答えるのに忙しそうなのに、僕といつも一緒に居る。
「彼女とかは?」と聞いたこともある。学校にいるなら僕ばかりでなく一緒に過ごしたいだろうと、一個人の友人に対する気遣いだった。
「んなのいねぇよ。つか、面倒だから今は恋愛とかしばらくいいやって感じ」
と、やはりモテそうな一言で返された。
「零央、放課後空いてる?」
「ん?葵斗からお誘いなんてめっずらしいー。空いてるぜ」
「昨日、兄さんと電話しててね、穴場のカフェを教えてもらったから一緒に行きたいなって思って……」
「出た。葵斗の兄貴好き。ホント恋する乙女みたいにラブなのな」
「ら、ラブって!そんなこと無い!兄さんには素敵な相手を見つけて幸せになってもらわないといけないんだから」
「んで、その兄さんの幸せそうな顔を見るのが?」
「ぼ、僕の幸せになるから……」
「やっぱラブじゃん!」
からかう零央に「もう!」と言葉で弱い反論をする。
「とりあえず放課後な。俺、ちょっと生徒会だけ覗いてくから校門で待ってろよ」
そう。
零央はこんなチャラチャラな見た目して、生徒会長なのだ。僕の高校は、立候補制じゃなく推薦と投票で生徒の役員が決まる為、校内の誰が生徒会のメンバーに選ばれても可笑しくないシステム。誰もが生徒達の長になれ、候補者も皆平等でこの学校の生徒という条件をクリアしていれば、例えテストの点数が悪くても零央みたく見た目が不良でも良いって訳だ。
良い意味でも悪い意味でも目立ち、人気の高い零央は自らが想像もしていない多くの支持をいつの間にか得ていて、見事生徒会長の座を自身が三年生になった途端に獲得した。
(まぁ……零央、勉強が出来ないって訳でも無いもんね……)
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