5 / 6

「葵斗はさ。家で普段何してんの?」 「何って……んー。何してるかな?」 「俺が聞いてるのに、知らねぇよー」  零央の表情は、傘の並ぶ距離で見えづらいけどきっと笑っているんだろう。 「趣味とか無さそうだよな葵斗って。あ、もう三年なったしひたすら受験勉強?」 「勉強はそんなにしてない。目指してる大学も無いし」  夢が無い。趣味も無い。  生き甲斐にしていることも無ければ、熱中していることも無い。  刺激的な何かに出会いたいとは思っている。  そう思わせたのは、熱中できる写真に出会った兄さんだ。羨ましいと思うのに、中々見つからないその何かは、求めすぎると駄目なんだと思いもう、探すことも辞めてしまった。 「零央は?趣味とかあんの?」 「ん?俺?俺はねー」  零央は、なんだか照れ臭そうに話し始めた。 「俺、趣味というか、夢があって。まぁ、分かりやすく言うとデザイナーなんだけどな」 「デザイナー?」 「そ。俺、服とかデザインして形にするのが好きなんだよ。見た目に寄らずで、ちょっと恥ずいんだけどさ」 「へぇ……」  零央の意外な一面を知れて、僕は驚いた。そして羨ましいと兄さんに対して同じ感情を持った。 (いい、な……) 「あ、誰にも言うなよ?こんな話したの葵斗が初めてなんだから」  歩みを止めて、傘から覗かせた零央と目が合う。 「な?」 「うん。言わないよ。いつか、見せてね。零央のデザインしたの」 「いいぜ。楽しみにしてろよ」  夢がある人は、やっぱり輝いている。  高校を卒業するまであと9ヶ月余り。もっと求めてみよう。自分のことに対して貪欲になろうと夢ある周りに動かされる。

ともだちにシェアしよう!