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第3話
爪で刻まれたミミズ腫れに消毒薬を塗りながら、佐野は苦い顔だ。
「すぐブチ切れやがって」
「怒らせる事をするからだ。今夜は何があった」
舌打ちし、佐野は顔を斜めに傾げて見せた。
首筋に、赤い痕が。
「またキレられそうな事を」
「違うって!」
今日、社外ボランティアで公園の除草を行ったのだという。
「その時に、虫に刺されて赤くなっただけだって!」
営業部の人間ほとんどで、草むしりをやった。
証人は大勢いるのだ。
女に付けられたものではない事は、誰だって知っている、と佐野は一気にまくし立てた。
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