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第4話

 佐野は勝手にワインを取り出し、瓶に口をつけて飲んだ。 「しょうもねえ事でヤキモチ焼きやがって」 「普段が普段だからだ。信頼されていれば、窓を破って5階から放り出されるまで蹴り飛ばされる事はない」  黒崎の言葉に憤るかと思いきや、佐野は意外にも殊勝に頭を垂れた。 「信頼回復、できてねえんだよ」 「回復?」  まるで、以前は信頼されていたような口ぶりだ。  佐野は、ほうじ茶にワインを垂らし始めた。  茶の色が、くすんだ赤に染まってゆく。 「まだ、アイツと付き合いだして間もない頃の話なんだけどよ」  黒崎も興味を惹かれ、わずかに身を乗り出した。

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