その日は朝から、体が重かった。 　額に手を当てると、熱い。 「風邪ひいたな」 　このところ仕事が忙しく、疲れていたからだろう。 　どうするかな。 　毛布を被り、考える。 　今日は、泉と一緒に植物園へ行く約束だが、この体で屋外を歩き通しというのは、酷だ。 　 　佐野は、デートをキャンセルする事にした。 　もう、互いに身も心も打ち解け合った仲だ。 　我儘が通用するか、試してみたい。 　約束の時間に訪ねてきた泉は、寝込んでいる佐野に驚いた。 　が、もっと驚いたのは、デートをやめたいと言ってきた事だった。 　これまで、無理をしてでも付き合ってくれた佐野がだ。 「仕方ないね」 「また今度な」 　そして、泉は帰って行った。 　思えば、デートに行けばよかったのだ。 　泉の眼の前でフラフラになれば、恋人ならどんな行動に出るのか解かったはず。