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第6話

「なンだよ。看病してくれないのか」  床の中で、ふくれっ面を噛みしめた。  しかし恋人の介抱を、指をくわえて待つのも癪な話だ。  佐野は、街中に借りているマンスリーマンションへと移動した。  いわゆる、大人の秘密基地だ。  社宅のマンションでは、いまひとつ寛げない。  そんな時、ここを利用するのだ。 「存分にごろ寝してやるぜ」  宅配ピザを頼み、TVで映画を見る。  好きな音楽を鳴らして、その中に浸りきる。  自由で楽しい病人ライフのはずだったが、物足りない。  頭に浮かんでくるのは、泉の顔。  だが、佐野はそれを振り払った。  彼に、風邪をうつしたくない。  それに、意地もあった。  恋人の看病に気の回らないようなヤツなど、知った事か。 「オンナだな」  メールで、このマンションを知っている女に連絡してみる。  ちょっと退屈してるから遊びに来ないか、といった程度の内容。  看病なんかしてもらうと、下手に深い仲に落ちてしまう。  本命以外には、遊びでいて欲しい佐野なのだ。

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