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第8話

「アンタ、誰?」  女の不機嫌な声で、ようやく佐野はその姿に気づいた。  泉だ。  バッグから覗いているのは、リンゴやヨーグルトなど、病人食になりそうなものばかり。  まさか、看病に来てくれたのか?   さっきは、部屋まで荷物を取りに行っただけだったのか?  戻ってみると、俺は居ない。  だったらこっちかもと、マンスリーマンションまで来てくれたのだ。 「僕は、佐野君の友達。風邪ひいたって聞いたから」  女に言い訳する泉は、ひどく悲しそうだった。  傷つけてしまった。  寂しげな背中を見送った。  修羅場になった方が、まだマシだった。  泉の悲しそうな顔は、佐野の心を深く抉った。

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