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第9話
そんな経緯があったとは。
黒崎は、ほうじ茶の赤ワイン割りをちびちびやっている佐野を眺めた。
「結果、嘘ついてデート断って、他の女と寝てる男になってたって訳だ」
瞼を伏せ、唇を引き攣らせる佐野。
「解かったろ? これで泉が、何でいつも細かい事でブチ切れるか。また嘘ついてる、って思われてんだよ。俺は」
黒崎は、何か声を掛けようと口を開きかけたが、途端。
「でもよ! 暴力に訴えるのは酷いと思わねえ!?」
佐野は、頭を抱えた。
「それは、泉の言い分も聞かなければ。なぁ、泉」
なぬ、と佐野が抱えた頭を上げると、クローゼットがゆっくり開いて……中から出てきたのは……。
「薫(かおる)!」
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