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第15話
「コホン!」
は、と二人は黒崎の存在を思い出した。
特に、泉。
佐野を吹っ飛ばすたびに、愚痴をこぼしにやってきていた。
誤魔化し続ける苦しさを打ち明けに、黒崎の部屋へと足を運んでいた。
「ごッ、ごめんなさい。黒崎さん」
黒崎の手前、佐野から離れようとした泉だったが、恋人はそれを許さなかった。
「功、ちょっと」
そのまま、唇が塞がれた。
二、三度甘く唇を食まれ、ちゅ、と濡れた音を立てて、泉から離れていった。
「これでいいか?」
「ああ。安心した」
佐野と黒崎、二人の男はにやりと笑うと泉の髪をくしゃりと掴んだ。
「これでもう、俺の部屋へ駆けこまなくてもいいな?」
二人の笑顔が嬉しい、黒崎だった。
彼らが喧嘩をするたびに、気が気ではなかった。
そう、こいつらには絶対に幸せになって欲しいのだ。
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