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ありえない新生活 7
「パルティア帝国大神官、エドマンド・アイスマン殿!
私は、ディーン王国黒狼 騎士団団長ルイ・スペンサーだ!
ディーン王国奴隷禁止法を犯した現行犯で、貴方を拘束する!
無駄な抵抗は止めて、今すぐ相手から離れろ!」
いかにも人に命令し慣れたヴァリトンの美声を聞いて、俺の身体に、電流が流れたような気がした。
ルイ・スペンサーだって!?
俺がWOWを五周もやり込んだ原因のキャラが、乗り込んで来やがった!
けれども、ルイの……この声を実際に来た途端、頭を思いきり殴られたような衝撃を受けた。
なんだよ、これは!?
騎士団長らしく、淡々と仕事をこなしているだけの冷徹なルイの声だ。
なのに、その声を聞いた途端、今まで感じたことのない焦れた恋しさに、身悶える。
切なさと、そしてどこか漂う懐かしさに、俺の胸はギュっと掴まれ……いいや、綺麗ごとでごまかすのは、やめよう。
俺は、その声に欲情したんだ。
リアル世界で、コントローラーを持ち、ちまちまゲームをやっていた時には、まさか二次元のキャラに、こんな感情を持つなんて考えもしなかった。
もともと俺は、銀髪男に床に上半身を押し付けられ、高く上げた尻にペニスを突っ込まれていた。
好きでもない銀髪男の肉の凶器に刺し貫かれた身体は、ただ痛い。苦しいだけのはずなのに、ルイの声を聞いて自然に甘い痺れと蜜があふれ出す。
それを勘違いした銀髪男が、嬉しそうな声を出した。
「ああ、リジー、お前はなんて、淫乱なんだ……僕に抱かれている姿を人に見られて悦 ぶなんて……!」
部屋に入って来たヤツの声を無視し、嬉しそうな声を出した銀髪男の言葉に、俺はすぐさま首を横に振った。
「違……っ」
とんでもない誤解だ! この、変態!
誰がお前に抱かれて悦ぶもんか!
今の俺は、誰にも見られたくない、浅ましい格好だった。
そんなの判っているのに、まるで、本能に導かれるみたいに、部屋に入って来た声の主を必死に探してた。
声……声、声の主は、どこにいるんだ……!
中毒性のあるその声に狂ったみたいだった。
一度ハマったら抜け出せず、どうしても、もう一回その声を聞きたかった。
俺は無理矢理身体をまげた。鏡に映った部屋の扉を見れば、そこに、二十人ほどの部下と一緒に黒づくめの騎士がいた。
ルイ・スペンサー!!
そう、自分で名乗った通りだった。
ディーン王国一の優秀な騎士団団長らしく、二メートル近い長身を見事な鋼の筋肉で覆っている。
無敵と言われて納得の重戦車みたいな体格にも関わらず、重さの感じられねぇ動きとダーク・ゴールドの髪は狼、と言うよりライオンみたいだ。
自分が『こうなりたい』と思える理想の姿がそこにある。
そんな、体格に見合った端正な顔立ちを見て、俺は思わず息をのんだ。
ルイの顔に傷が無い!
なぜ、片目設定のこいつの両目が揃ってるんだ!?
そう、叫びだしそうになって、思い当たった。
こげ茶色の両目がそろっていること、そして状況から考えると……今がまさに、ルイが致命的な傷を負ってしまう原因。
片目を失う話の真っ最中に違いなかった。
迫りくる運命を感じながら、息も絶え絶えに見上げた顔に、息をのむ。
……なんて、ヤツだろう……!
見慣れた片目のない顔も、ワイルドで好きだったけれど、傷のない顔は、何よりも雄々しく……気高く……美しかった。
俺は、自分の置かれている状況を、すっかり忘れて、その姿に見とれた。
そして……思わずギュっと入った力に、銀髪男は喉の奥でくくと笑うと腰を使いやがって来やが……っ、あっ、クソ……ばかたれ……っ!
俺の胎内の中に、自分の分身を突き立てたまま。
部屋に入って来たヤツの気配に、小休憩を取っていた銀髪男が、ゆるゆると肉の剣を動かすことを、再開しやがったんだ。
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