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ありえない新生活 8
とたんに、だ。
強く気持ち良いって刺激に何も……っ、何も考えられなくなるじゃねぇか……っ!
「ああ……なんて、具合のいい……締まる……」
耳元でうっとりとささやく銀髪男が、うざい。
「うるせ……!」
だから、お前に欲情してるんじゃねぇ……!
何とか、銀髪男の腕から逃げ出そうともがくうちに、ルイと視線が合った。
その俺を見つめる瞳を見て、背筋が凍る。
男に抱かれて悦 ぶような男とは到底つりあわねぇ、飛び切り高貴な瞳だったんだ。
こんな奴に卑屈で浅ましい、自分の姿を映されるなんて、嫌だった。
見るな……っ! 俺を見るんじゃねぇよ……っ!
恥ずかしさに理性がパニックを起こしたのに、身体は……悦楽に震えた。
俺をめちゃくちゃに突いている相手はルイじゃねぇのに、彼の姿を見ただけで、更にエロい気分になるなんて!
ありえねぇ、と思いつつも、ルイが俺を見つめるその視線で、ビクビクビクッと身体が勝手に震えた。
もっと……もっと確かな刺激が欲しくて、自分から今俺を犯している相手に腰を擦り付ける。
「あっ……あん……くぅ……は……っ、いっ……いい」
憧れの男の前で、女のように犯され、気持ちいい証拠の声が、我慢できねぇなんて!
身体と心がバラバラで、気がおかしくなりそうだった。
「誰か……俺を……殺してくれ……」
強い快楽に耐えかねて、思わず呟いたとき。
何人もの人間をかき分けて、俺たちの目の前にやって来たルイの声が、もう一度響いた。
「エドマンド・アイスマン殿!
私は、今すぐ相手から離れろといったはずだ!」
聞き間違えようもなく、明らかに怒気のこもったその声に、エドマンド・アイスマンと呼ばれた男。
俺を犯し、精をぶちまける寸前だった銀髪男は、不機嫌に唸った。
「ここはパルティア帝国船の船倉だ。ディーン王国の法律は通用しない!」
銀髪男の良い草に、ルイは形の良い眉を跳ねあげる。
「いや、ディーン王国領海内であることのほうが優先だ。
しかも、パルティア帝国の皇帝も奴隷廃止に同意したにも関わらず、銀髪の神官が、神に捧げる供物の名目で奴隷売買を止めずに困っていると話を受けている。
お前には、自国皇帝からも直々に出頭命令が出ているぞ!」
そう、ここは王国で攫った人間を奴隷としてパルティア帝国に売る船の中だ。
だから、銀髪男は不自由な体勢でも、船が揺れるタイミングで俺を揺らして弄ぶことができたんだが。
「くっ」
奴隷を売って金を稼ぐつもりだった悪の神官の銀髪男も、ルイに迫られてさすがに観念したらしい。
俺の中から、太い欲望を引きずり出してゆく。
内壁をこするその刺激で、俺の腰が勝手に揺れるのを見計らい、銀髪男は今まで俺のペニスを握っていた手を放しやがった。
『僕を拒否した罰だよ』と言われたけれど、何か言い返す余裕なんてなかった。
今まで、欲を吐きたくて狂いそうだった俺は、たまらず溜まった白濁をぶちまける。
「あっあ……うっ」
日本の警察にあたる騎士が、何人も見守る中。
一人で乱れてイクなんて、これ以上情けない姿は無かった。
男に犯され蜜でぬめった尻を突きあげ、一刻も早く吹きだす白濁が収まるように銀髪男の足元にうずくまるしかない。
人としてのプライドが破壊され、本当に性奴隷なった気分だ。
情けねぇ……
勝手に涙があふれて、止まらねぇ。
そんな俺を見かねたのか、誰かにマントを掛けられた。
思わず見上げた俺は、そいつと目が合い……凍りつく。
ああ……本当に目の前にしたら……マズい。
つがい、なんて知らねぇ。
それどころか、今までまともな恋愛もしたこともねぇ。
けれども……もし、俺がゲームの中でさえも純粋な男じゃなく……『つがい』を選ぶヤツらの端くれだとしたら……運命の相手は、こいつだと思った。
それが。
「ルイ……スペンサー」
「……っ! 」
俺が思わず名前を呟けば、そいつも、俺の顔を食い入るように眺めたまま固まった。
そんなルイを見てしみじみ思う。
俺、こいつのこと好き……かもしれない。
一目ぼれ、かもしれない。
銀髪男に辱められて、やっぱり男なんて大嫌いだと再確認したっていうのに、コイツにだったら、何をされても良い、と思うくらいに。
でも、だからこそこんな……他の男に犯され、汚れたみっともねぇ姿をルイの前で晒すのだけは嫌だった。
しかも。
「伝説と同じ黒髪の……少年?」
茫然と呟くルイの声に、俺ははっと我に返る。
もしかすると、ルイは俺をWOW内の伝説の少年『勇者』と認識してしまったかもしれねぇ。
本来、ルイ・スペンサーが勇者と出会うのは、片目を失った後だ。
なのに、だいぶ早まってしまった場合、確定されているはずの未来はどうなるんだろう?
片目を潰されるところも、そして勇者 の為に死ぬのも、最悪の全てを俺はルイの間近で見届けんのか?
ちくしょう! 冗談じゃねぇや!!
異世界に来たからには、もちろん性奴隷より勇者の方が良いに決まっている。
だけど!
俺が、ルイのそばにいてはダメだ!!
とっさに逃げようと身を翻したとき、俺はルイに腕を掴まれた。
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