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嫌いです(第20話)

「スパンキングで感じちゃうんだ」  お尻叩きがその後も続き、「フッ」と鼻で笑われる。 (スパンキングって言うんだ。このプレイ……)  ヒリヒリした痛みと恥ずかしさで唇を噛む。今頃デカ尻は猿にも負けず劣らず赤く染まり、痛々しい手の跡が残っているだろう。  サキさんが指先で叩いたところをなぞる度に何かが疼く。まだ開拓されていない性癖なのかもしれない。  風を切る音がし、衝撃に備えるが尻たぶに痛みがない。叩かれ過ぎて麻痺状態になったのかと不安に煽られるのも束の間。内腿の隙間を何かに狙い定められる。 「本当は口でファスナー開けて欲しいとこだけど、パクンと食べられたら形勢逆転も有り得るからね。仕方ないな」  ジーと金具と布が外れ、隠れていたものがぴとりとそこに充てられる。 (サキさんの……っ。直に触ると余計に熱い……!)  触り覚えがある長くて太い形状。アナル玩具にもあったが本物とは比べ物にならない。 (挿入られる。これからサキさんにバックでセックスされ……)  くにゅり。カウパー液を垂らしたぬるぬるのペニスがパンパンに太った内腿にキスをする。期待で閉じたアナルがヒクつく。 「これなら大丈夫でしょ」 (大丈夫って、どういうこと?)  サキさんは両手で下尻を持ち上げ、濡らす。 「セックスがしたかった? でも、残念。これはお仕置だからやってあげない。きちんと足は閉じていてね。じゃないと滑るから」  股の中に肉棒がゆっくり入ってくる。太腿を通り、ドア側にある僕のに重なった。すでに芯を持ち始め、硬さや規格外の大きさ、セックスとは違う形で叶ったあるゆる事実に腰の力が抜けそうになる。 「緩めると間違えてアナルに挿入しちゃうかもよ?」 (あっ……!!)  肉まんを割るみたいにお尻の谷間を開かれる。熱く蕩けそうな入り口に冷風が吹き、内腿にはサキさんのペニスが挟まっている。  つぷんと骨格がありつつ長く滑らかな指がアナルの中に進んでいく。出てくる前にシたからゆるゆるだった。 (ああっ、大きいし長いっ! 無理ぃ……♡♡)  深く行けば行くほど圧迫感にしがみつく。  最初はナカ全体を確かめるような動きだったのが、すぐに前立腺を見破られ、指腹でコリコリいじめられる。 (ほおっ、ほっ、もっと♡♡)  腿を擦る動きをしたせいかパシンと一叩き。  言葉にならない叫びを荒呼吸と一緒に出してしまう。ついでに精液も少し漏れた。 「……へぇ、かなり解れているな。柔らかくなったんだね。私が触らないうちに我慢出来なくて開発したのかしら。それとも」 (もっと、たくさんいじめてください♡♡) えろい願望は伝える術がなく、伝わらないまま指が離れていく。 「あ、ヒクついてる。取り出す時もアナルが締まって離さないから指が引きちぎれるかと思ったよ」  悪い感想にさえ、またひくんとアナルを開閉してしまう。無意識なのに意識的に動かしているようで、面目無い。サキさんの気を逸らすために人語じゃない声をわざと出し、行為を急かせる。 「慌てるくらい欲しいんだ。変態お兄さん」 (も、なんでもいい。早く、早くう……♡♡)  ぱちゅ、ぱちゅん、ぱちゅん。  僕の腰とサキさんのお腹が何度もぶつかり、離れる。繰り返すほどいやらしい水音が部屋に響き、自分がサキさんにセックスされていると錯覚してしまうほどだ。 (あっ……♡♡!! サキさんの熱いのが何度も内腿と金玉に当たって擦れて……!)  ぬるついたものが自分の我慢汁かサキさんのかは分からなくなる。どちらにしろ混ざって気持ち良い。  陰茎の裏側を鉄の扉に這ってしまい、変態汁を垂らしていく。 (ダメなのに、これはお仕置なのに……っ♡♡)  背筋にゾクゾクした快感が流れ、海老のように反って快楽に振り回される。 「腰掴んでのは私だけど、動かしてるのはお兄さん自身なんだよ? 分かるかな離したくないって。太い腿で私のペニスを圧迫してくる。即席アナルだね♡」  耳元でくすくす笑われ、腰がまた動く。 (サキさんの全てに身体が反応してしまう……!)  内腿も、ちんこも、腰も。 「私がピンク好きなのはね、えっちな色だなと思ったからだよ?」  唐突な情報に気を取られていたら首が楽になる。ガシャン。足元で立派な装置が転がった。 「へっ……ぁっ、僕まだ、サキさんのこと……あ……、あっ♡♡」  絶望と共に限界がもうそこまで来ていた。 「ふふん。勝手に外しちゃった」  どうやらサキさんのおかげで外されたらしい。安心して胸を撫で下ろす。そうしたら汗と快感でドロドロになったアナルにサキさんのペニスがキスをしてきた。 「うっ、ひぁ……♡♡」  前傾姿勢だった体がサキさんの胸に吸い寄せられる。硬くてがっしりとしたブレザーの男の子。 「……日和さんさ『嫌い』って言うなら今しかないよ」  優しさとは系統が違う切ない声で囁かれ、前に出た腹へ腕が回ってくる。がっちりホールドされた。 「ぼ、僕は……!」 (誘導作戦……?) 『オレに関する嫌いワードを一つでも発したのなら行為は中断する。それでいいね』  彼は確かにそう忠告した。というより誓った。  必死に首を横に振ると舌打ちが返ってくる。 「うーそ。そぉ〜れ、内腿で孕め♡」  小悪魔な甘さで命令され、全身に快感が走った。 「ひああぁ……っ♡♡」  大量の汁と熱が後ろから吐き出されると耐えきれずにドアに向かい、どっぴゅびる、と今までにない汚い濁音が吐き出された。 (大好きな人と一緒に、イッた……♡♡)  前も一緒にイケたけど、ドアに放たれた大量の白濁の液体が、二人で気持ち良くなれたことを証明している。目にも脳裏にも焼き付けた。足を伝って踵に垂れる青臭くも熱過ぎる精液と、股の中にまだ硬みを失わない男性器が生々しい。まだ行為は続くのかと期待に胸がときめく。 「サキさ……ん、気持ち良か……」 「今のお兄さんってば誰かに目撃されたらもうお終いだね。学生に無理矢理犯された豚ちゃんだと揶揄されて、ネットに書き込まれるかも」 「……あっ……ぁ」  そうだった。僕は学生に犯されて喜ぶ豚。レイプ紛れに見えた行為も実は自らおねだりした変態客。 「ほら、聞こえる? 誰かこっちに来るよ」  顔が青ざめるよりも先に胸を扉へ押し付けられる。自分達の吐き出した精液が敏感になった乳首や汗まみれの体にべちゃり。不快から腰を引こうとするが。 「逃げちゃダーメ。お兄さんとオレのやつなんだから汚くないよ」  程良く鍛えられた硬い胸板が被さるように襲いかかった。再び張り付いた乳首やペニスを粘着質な液体に絡ませられる。 (窓拭きみたいに体で扉を拭かれてる♡♡)  たちまち両方勃起し、腿にあるサキさんの男性器を内股で擦っちゃう。 「こんな状況でさえセーフワードを言えないのなら、もういっそのこと見せつけちゃおうか?」  無邪気な提案に血の気が引いていく。セーフワードを使用するのは嫌だが、「なんで」という問いすら言葉にならない。もう首輪はつけていないのに。 「Present」 (プレゼント? なんなの、そ……ッ)  ドクン。心臓が嫌な音を立てる。嫌な汗が穴という穴から噴き出した。足から力が抜けていき、床に座り込んだと思えば。 「ああっ、あぁ、見な、見ないで……」  太腿を腕で抱え、肛門を扉に見せつける姿になってしまった。 「Presentは人によって違うんだけどね。まさかお兄さんはこんなポーズをプレゼントしたい変態だったなんて。しかも搾りたミルクたっぷりの短小包茎ペニスや、鯉の口みたいなパクパクアナル、勃起木苺乳首まで相手からぜーんぶ見えるね!」  満面の笑顔に恐怖心を抱いたことは今までなかった。明るい声色なのが余計に恐ろしい。 (違う……!! 違う! 僕はサキさん以外に見せたくない!) 「真っ青な顔色だね。どうしたの? やっとセーフワード言う気になった?」  彼は僕の隣にしゃがみ、頬をついた顔を傾げる。  どうしてそこまで言わせたいのだろう。僕にはさっぱり理解出来ず、また懸命に首を振る。 「や、やです……。俺、嫌われるのは……すごく嫌だけど、僕はサキさんを嫌いになれま、せん……」  二人分の精液でどろどろぬるぬるしようが、腕はがっちり脚をホールド。簡単には解けない。 「ハルさん、綺麗だよね〜」 「うんうん。女王様になる時もあるけど、スタッフに気軽に声を掛けてくれるし〜」 「そうそう〜! 料理も上手だよね〜」  三人の女性の声だった。足音が徐々に大きくなり、もうすぐそこまで来ている。 (嫌だ、女性だ。嫌々! 見ないで、こっちに来ないで!!)  立ち直れない。ネットでも書き込まれたりしたら、心の傷は絶対に癒えることはないだろう。もう一生、女性どころか誰とも話せない体になる。予言出来た。 (菌より酷い地獄が待っている。サキさんに捨てられる運命の僕には拠り所も助けもない。これから、これから……)  正常さを失っていく思考。なるべく回避をしたいのに体は命令を正直に受け入れ、足をさらに開帳させていく。 (もう、来る……!! あと数歩でここへたどり着く! 僕の人生は、人生はっ)  視界が滲み切り、痙攣が止まらない。意識もぼうっとした。また気を失うのか? 失神する間に見られたら……。 『(Sub)だって幸せになりたい……』  ある日、泣きじゃくるデブ男の前に金色の髪を靡かせた人物は声をかけてきた。周囲が引こうが、避けようが関係なく。 『お兄さん、大丈夫?』 「い、嫌だ……。ま、だ死にたくな……い。サキさん、助けて……」  自分から誰かに助けを求めたのも初めてだった。いじめられた時も判明されるまでずっと。耐えていたのではない。口に出来なかった。  僕は弱者であるから誰かを巻き込みたくなかったのだと思う。ほんと格好悪い。  唇に柔らかいものを押し当てられ、思考だけでなく時間が止まる。花の香りに涙が零れた。 「お願い、日和さん。『サキさん嫌い』って言って?」  微笑む顔に悪意は滲んでいない。優しく呼びかけられ、息が上手く吸えなくなった。 (嫌、嫌なのに……)  はくはくする唇の動きを頬を撫でながら待つサキさん。大きな手に包み込まれ、触れた部分が温かくなる。苦しいものが喉を通り過ぎていく。 (サキさんは……凄い人だな)  言いたくなかった。  けど、状況を変えるためには言わざるを得なかった。 「サキさ……ん、嫌い、です……。ごめん、なさ……い」 ──ガチャ。ガチャ、ガチャ。 「あれ? ここ、鍵付いてる?」 「おっかしいな。休憩しようと思ったのに」 「あ! すみません。今、着替え中なんです」 「嘘っ、サキさん!? 本物のサキさん!?」 「本当に! え、でもでも……」 「イベントの手伝いで最近は裏方に事業に専念していましたもんね。久しぶり〜です。後でご挨拶に伺いますので本当にすみません」  紳士に謝罪すれば「失礼しました〜!」と全員の黄色い声が重なった。どうやらサキさんは人気者みたいだ。  足音が遠のいていくと、彼は深いため息を吐く。 「帰っていいよ」  彼は立ち上がり、スラックスの埃を払うとチャックを直す。もうこれで終わりなんだと直感でなくても分かった。  対する僕は未だPresentのまま。お仕置きが終了しても、元の体勢に戻れなかった。 (あ、どうしよう……) 「首輪も外したし、セーフワードの効果もまだある。数分くらいふらつくと思うからもう少しここで休んでいって。ハル姉には話つけておくから」 (この焦燥感はせめて、サキさんの関係にピリウドが打たれたことにしたかった)  テキパキと部屋の後片付けに入る彼。動けない僕。  背筋に寒気が走っても我慢すれば済んだ。先端の穴から汁を少しでも漏らしたのが、気の緩みだったのだろう。  じょ、しょぉぉ、ああぁぁ……。  静かな部屋に下品な音がよく響く。放物線を宙に描き、生温かい黄金汁の水溜まりが尻の下に広がる。 (おしっこが止まんない……っ! Presentのままおもらしする♡♡)  現実逃避にギュッと目を閉じるが無意味だ。耳が拾うし、視線を感じた。それを本能は何と捉えたのか勢いが出て、胸や腹にかかる。膀胱すら弱々しく情けない。  放尿が終わるまでの時間がとても長く感じられた。

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