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第9話

 二年目は、運動能力の強化。  ジムのような設備はないが、師父は体ひとつで教えてくれた。  拳を放つにしても、足指の踏ん張りから腰の回転、肩の入れ方まで様々なポイントがある。  それらが充分に作用しないと、活きた拳は打てないのだ。 「拳は当てる瞬間に強く握るのじゃ。最初から力を入れていては、速さが落ちる」 「はい、師父!」  そんな中、学校から帰った浩宇が、おやつを持ってきてくれる。 「お腹がすいたでしょうから、一服してください」 「そうさな。では一休みじゃ、天佑」  疲労を貯めないように、こうして休憩も取る。  その間、浩宇は学校で起きたことなどを楽しげに話してくれる。  この時は厳しい師父も頬を緩め、共に語り合い笑い合ってくれる。  

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